10 社畜の鏡 彼は爆弾に助けられます(改稿済)

『社畜の鏡 彼は爆弾に助けられます』


【入社3日目】


 俺は今,探索者協会に来ていた。

理由は黒元さんにとあることを伝えるためである。

いやぁ。

昨日とんでもない提案をされちゃったんですよねぇ。

まぁ決心がついたので黒元さんに俺の答えを言おうと思います。

受付を済まし,会長室に通してもらった。

昨日の社長が作った穴は綺麗さっぱり無くなっていた。

素直に行動力に感激した。

社長にもこんな行動力あったらな。(泣)

今日は千早やキララたちもいない。俺1人だ。

あ,ちなみに千早は特に体にも異常なしで,普通に今日も出勤したらしいよ。

すごいよねー。

尊敬するわ。

数分後,黒元さんが会長室に入ってくる。


「すみませんお時間を取らせてしまって。」


社長に時間を取らせてしまったことに少し罪悪感を感じる。


「全然大丈夫だよ。なんなら暇だったくらいだしね。」


すまん。

前言撤回。

おい。

それで大丈夫なのか探索者協会。

最近,俺の中で本来威厳があるはずの「社長」や「会長」といった言葉がゲシュタルト崩壊しつつある。

なんでだろ。

目から水が出てるような気がする。

若干頬を引き攣らせながらも俺は本題に入った。


「昨日のことについてなのですが。」


「うん。知っていたよ。答えを聞かせてくれるかな?」


そう。

昨日,俺をトップとした対オルデルの団体を創りたいと会長直々にお願いされたのだ。

俺は至って会社員で探索者だ。

流石に何かのトップになった経験なんてないし,まずそもそういうことをしようだなんて思っていなかった。

だから言われてすぐに答えを出せるわけもなく,保留にして少し待ってもらっていた。

リーダーになることに関して少し俺はトラウマがある。

だがこのままウジウジしていては自分が守りたいと思ったものも守れない。

そんな俺が出した答えは…。


「至らない点もあると思いますが精一杯努めさせてください。」


引き受けることにした。

理由は簡単だ。


『大切なができたからね。』


びっくりした?

俺別に世界の平和とかはどうでもいい主義なんですよ。

ただ自分の周りの人達に笑っていて欲しいだけですからね。

酒呑社長に石狩社長,千早や幸さん。

そしてrestartのみんな。

この人達には幸せにあって欲しい。

これは高校時代に幼馴染が自殺した俺の強い決意だ。

そしてその幼馴染との決別だ。


そんな俺の心情を察したのか黒元さんは聖母のような笑みで礼を言ってきた。

この人多分だけど鑑定系のスキルを持ってるね。

まぁ聞かれるまで過去については言うつもりないんだけどね。


「それじゃあ今後の予定について話していこうか。」


いろいろと説明はあったが,詳細に関してはメールで送ってくれるらしい。

そして明後日に1回目の集会があるらしい。

どこぞの社長とは違ってちゃんと予定を伝えてくれる。

俺は嬉しさで涙が出そうになったが堪えた。

俺やっぱり涙脆くなってきてるよね。



 探索者協会から出た俺は,その足で職場へと向かった。

今日の仕事は『配信』と『2期生への挨拶』だけだ。

いやぁやっぱり仕事量が少ないと気分も上がるよねー。

今日の夜は何しよっかなぁ。

久しぶりにゲームでもするかー?

今日は午前中に挨拶を済ませて午後から配信をするようにしようと思う。

そうすれば夜の時間が取れるからね。

『restart』の警備員に社員証を見せて通してもらい,社内のミーティングルームへと進む。

俺は今日の仕事量の少なさに感極まっていた。

だから油断していた。

ノックをしてドアを開けるとそこには3人の女性がいた。

もう1度言う。

着替え中だ。

俺は下着姿の彼女達と目が合う。


全てを察した。


「ア,シツレイシマシタァ。」


俺はすぐにドアを閉め,何事もなかったかのように逃げようとする。

とりあえず千早のところへ…。

しかし現実はうまくいかなかった。

すぐにドアが開けられ,中に引きずり込まれる。

そりゃあ仕方ないよね。

とりあえず謝らないといけないな。

俺はすぐに土下座の構えをとり,ヒトコト。


「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!」



 とりあえず誤解を解くことができて俺はホッとしている。

あの後,俺の声を聞いて駆けつけてきた千早が彼女たちに事情を説明してくれ,なんとか誤解を解くことができた。

彼女は昨日あんだけ戦っていたというのに何事もなかったかのように振る舞っている。

俺なんて腰がめっちゃ痛いんだよ?

俺は再度彼女たちと向き合う。


「先程はすいませんでした。ご紹介に預かりました通り,今回ここの社員になった麗目隆です。」


気まずい。

彼女たちも笑ってれくれてはいるが,少し表情が引き攣っている。

やはり着替えを覗いたことが尾鰭をひいているのだろう。

しばらくの間の沈黙を金髪の少女が破った。

この時の俺にとって救いだった。


「私の名前は暗月やみづきカラメです。さっきは私たちの方こそごめんなさい。不注意でした。」


そう言って頭を下げる。

やはり空気が悪い。

換気でもした方がいいのかな…。

空気が悪くてどうしようかと悩んでいると,千早が助け舟を出してくれた。


「みなさん。麗目さんはあの有名なダンジョンクラッシャーですよ。」


え?

ちょい待て。


彼女がそう言うと3人の目が輝き,1人の少女が興奮した様子で話しかけてきた。


「私,如月きさらぎキアラって言います!ダンジョンを壊したって噂は本当なんですか!?」


黒髪のボブに青のメッシュを入れた小柄な少女。

だが小さくない。

いや,これは黒元さんよりも大きな爆弾を抱えていらっしゃる。

俺は慌てて爆弾から目を逸らす。

彼女はキラキラとした『陽』の眼差しを送ってくるが,俺は別のことに混乱していた。


「は,早野さん。俺がダンジョンを壊したことってみんな知ってるんですか?」


たまたま彼女たちが知っていただけだよね?

うんうんきっとそうだ。

頼むから広まっていないでくれ!

そんな俺の願いは,


「いや,新聞にも載っていたくらいですし,知らない人の方がおかしいですよ。」


早野さんのその一言によって粉々になった。


嘘やん。


「やっぱり本当にダンジョンを壊したんですね!私大ファンなんです!サインください!」


そう言って如月さんが俺に近づく。

俺たちの間の距離はほとんどないが,彼女の爆弾のおかげで少しは間ができている。

今は感謝しかない。


「あ,あの。私もファンなんです。サインください。」


そう言って闇月さんも近寄ってくる。


やばい。

本格的に柔らかさに埋もれそう。


もう1人はなんか凄い慌てている。

俺は千早にハンドサインを送って助けてもらう。


「助かった…。」


さっきまでは苦しかったから息も絶え絶えだ。

だがここで俺に天使が舞い降りる。


「だ,大丈夫っスか?」


OH。


「マイエンジェルだ…。」


「何言ってるんですか?」


そんな俺に千早の容赦ない一撃が刺さった。


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