最終確認ですが、夜逃げほんとにすんですか!?

沼津平成

本編

 『会社ごと お引越し』


舞台:一九九四年 南のほうのある島


「最終確認ですよ!」


 9歳の男の子――秘書が走ってきた。


「ああ、どうした?」


 年老いた社長・遠藤律治えんどうりつはるはコーヒーをくいっとやる。


「本当に【夜逃げ】するんですか」


 遠藤は顔をしかめた。


「夜逃げとは何だ。人聞きの悪い。お引越しだよ、会社ごと」


「ですが社内では不安の声が上がっています」


 上層部は遠藤が借金まみれなどを知っているらしい。バブルで遊びすぎたな、こやつ……


「なあに、北海道が怖い奴は置いていけばいい、あーあ、もうちょっとで極楽だったのに……」


 そうなのだ。会社が北海道に移った翌日だったのだ、北海道のビルの近くを震源にした、大地震が起こったのは。震度六、ぐらついたでかいビルなどひとたまりもない。


 極楽まであとちょっと――その遠藤の言葉は、何を指していたのだろう。

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最終確認ですが、夜逃げほんとにすんですか!? 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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