十二時間寝てみた(途中少し起きる)
隅田 天美
「酒を百薬の長というのならば睡眠は万病の薬である」
私は子供の頃に弟の入院で母方の祖父母の家に一時期預けられていた。
近所の子供たちと外で遊んだりゲームをしていたが、風邪になりそうなときがあった。
そうすると、祖父たちは『百草丸』という変な臭いのする小さい黒い薬を飲ませると「早く寝ろ」と半ば強引に風呂に入れて眠らせた。
現在、私は四十の半ばを過ぎた。
祖父母はもういない。
今年は別れの多い年だった。
友がこの世を去った。
入社当時の唯一残っていた上司が異動になった。
私をよく知る心の病院のスタッフが遠方に引っ越した。
私という人間は基本的には喜怒哀楽はあまり表に出さない。
出さないというか、出ない。
悲しいとか寂しいとか思うことはあるが表情があまり動かない。
最近、急に寒くなった。
十月半ばまで真夏日が続いたが、今では厚手の布団や長袖は欠かせない。
そのせいか、私の体調もおかしくなった。
インフルエンザ予防接種を受け、映画(ナイト・シャマラン監督『トラップ』)を観てから気分は落ち込み、体が気持ち悪くなり、食欲なども落ちた。
確かに今年に入って精神的な部分に加え、肉体的部分も衰えを痛感させられた。
実は、職場のお手洗いで胃酸を吐いた。
病院で胃カメラを使って胃を見ると医師曰く「あー、幽門が緩いんだ」と言った。
「幽門?」
私の問いに医師は自分の腹を指さした。
「胃と腸を結ぶ『門』だよ。隅田さんの場合、そこが緩いからストレスや刺激物を過度に与えると逆流が起こる。食べ終わっても寝ないでね」
昨日、私の体調は変だった。
--何もしたくねぇ
体も脳も動くことを否定する。
テレビ欄を見ても大好きな『THE世界遺産』がない。
脳の中の誰かが言った。
--寝よう
この時、午後四時である。
寝るには早いが、体の不調などを考え、私は寝る決意をする。
なお、参考までに書くが、普通の人が寝るには八時間が限界だ。
私の場合普通ではない脳みそなので、その限界も知りたかった。(発達障害など)
寝だめなども意味はない。
明日(=今日)のゴミ出しのゴミをゴミ袋に集めて、服薬をして、風呂を焚き、ご飯を予約炊飯する。
風呂に入る。
ここで私の寝るためのルーティンがある。
入浴前に必ずシャンプー、リンス(最近だとコンディショナーと言うらしい)洗顔、体を洗う。
これをしないと、よく眠れない。
桶で風呂の湯を汲んで泡を落とす。(シャワーはあまり使わない)
入浴して、上がる。
体をタオルで拭いて、寝巻に着替える。
寝床にアロマキャンドルを付けて、枕元のライトをつけてゲームや書籍類を適当に読む。
この時、午後六時少し前だ。
あっさり、寝た。
やはり、体は疲れていたのだろう。
そして、目が自然と覚めた。
『気持ち悪い』
上げた上半身へ胃酸がこみあげる。
急いで飲み込む。
苦みと酸味が不味い。
ライトをつけて、残っていたコップ内の服薬用水を飲む。
水が美味い。
時計を見ると夜十一時。
トイレに行った。
便座に座りながら、『夕食を食べなかったのが悪かったか?』と考えた。
なにせ、動いてない。
我が家の家訓に『働かずもの、動かざる者は食べるべからず』というのがある。
それに則り、それ以前に昼食のカップラーメンが胃に残っていたので夕食はなかったのだが、どうも、駄目だったらしい。
胃酸を中和するために水を飲む。
再び、寝床に入る。
夢で覚えているのはアニメソングを聞いたことばかりで風景や人物は一切覚えてない。
私の場合、夢は『見る』というより『聞く』ことが多い。
そして、現在に至る。
十二時間寝てみた(途中少し起きる) 隅田 天美 @sumida-amami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
暇人の集い最新/隅田 天美
★58 エッセイ・ノンフィクション 連載中 236話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます