第6話 麻美さんの祖父母への挨拶

 麻美さんと付き合い始めて半年ほどたった頃、私は麻美さんと結婚する決心をした。そして、彼女のおじいちゃんとおばあちゃんのところに挨拶に行った。


 私は麻美さんの家に行く前に、焼きとり屋で麻美さんのおじいちゃんが好きな「砂ずり」をたくさん買った。

「今日は、麻美ちゃんと一緒じゃなかと? 麻美ちゃんはおらんとね? そやかて、いつも麻美ちゃんが買うていく「砂ずり」ばぎょうさん買うていくとは、どげんしたと?」

 焼きとり屋のおじさんがそう聞くので、私は、

「実は、今日、麻美さんのおじいさんとおばあさんに、麻美さんとの結婚の許可をもらいに行くのです」

 と言った。

 するとおじさんは、

「そぎゃんこつね。そりゃめでたい、めでたい」

 と言って、私の好きな「鳥皮のぐるぐる」と「豚バラのねぎま」をサービス品として付けてくれた。豚バラの味付けは、ちゃんと、「塩」と「タレ」を1対1にしてくれた。


 麻美さんも待っている彼女の祖父母の家に行って、私が、

「こんばんは」

 と言うと、麻美さんのおばあちゃんが、

「なーい」

 と言って玄関に出てきた。

 その返事に私は、奈美さんのおばあちゃんは「佐賀出身だ」と思った。

 佐賀弁の「なーい」は、「はーい」という意味である。

 

 私が麻美さんのおじいちゃんとおばあちゃんに「福岡毎日日新聞」の顔写真付きの名刺を渡して、

「麻美さんと結婚させてください」

 と言うと、おばあちゃんは、

「あなたは、ほんまによか男ね。その上、新聞社にお勤めとは、たいしたものじゃ。

 不憫ふびんなこの子を幸せにしてやってください」

 と、即、麻美さんとの結婚の許しがもらえた。


 すぐに麻美さんとの結婚の許しがもらえたのは、「砂ずり」の効果ではなく、「新聞社にお勤め」が大きな要因だった。

 この世代の人たちは新聞はうそを書かない、正義の味方だと思っているのである。


 祖父母に僕と結婚する許しがもらえて、麻美さんは、とても嬉しそうな顔をした。

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