第3話 彼女の発見と再会

 私はその日、健康診断の残りの項目を消化するため、先週タクシーが突っ込んだ病院に朝早くから行った。

 病院の入り口は、まだ応急処理のべニア板が張られている状態だった。


 私が受付を済ませてふと見ると、受付を待つ席にあの彼女がいた。

 前髪を額から左右の耳の前にたらした可愛い娘が・・・

 私は写真付きの社員証を彼女に見せて、

「先週はこの病院にタクシーが突っ込んだけど、お怪我はありませんでしたか?」

 と、彼女に声を掛けた。

 すると彼女は、

「新聞社の方だったんですね。どうりで、写真をいっぱい撮っていたのね」

 彼女は、私のことを覚えていた。


「今日はおばあちゃんのお薬を取りに来ただけで、すぐに帰らなくちゃ」

 という彼女に私は名刺を渡し、

「あの事故の時のことをもう少し詳しく聞きたいので・・・」

 と、彼女とお知り合いになりたい一心で、私が思い付いたままのことを言うと、彼女は携帯の番号を教えてくれた。


 彼女は「大林 麻美」という名前で、携帯の番号しか教えてもらえなかったが、私は彼女がとても魅力的な女性だと思った。

 私はその病院で健康診断を終えると、そのまま出社した。


 私が社で、前の週のバスと軽自動車の事故の写真を確認すると、彼女は姪浜にあるスーパーの制服を着ていた。

 そこは私が仕事帰りに、そのスーパーの店頭に店を出している「焼とり屋」で何度も焼きとりを買ったことがある「ヤオン姪浜店」だった。


 私はその日、普段より早めに退社して、ヤオン姪浜店に行った。

 私の目的は二つ・・・それは、そのスーパーの店頭に店を出している焼きとり屋で、「鳥皮のぐるぐる」と「豚バラのねぎま」を買うことと、あの可愛い彼女を探すことだった。


 私の目的は、同時に達成された。

 私が焼きとり屋のおじさんに「豚バラのねぎま」を二本注文して、

「一本は塩、もう一本はタレにして」

 と、味付けの注文をした時だった。


「新聞社のカメラマンさんも焼きとりを食べるの?」

 という声がした。

 横を見ると、私が会いたかった彼女が立っていた。

 横に並んでみると、彼女は思ったより小柄だった。


 彼女を探すためにこのスーパーに来たのだが、私は、

「どうして、ここにいるの?」

 と、彼女に聞いた。

 彼女が、

「私、このスーパーの食品売り場でレジを打っているの」

 と言った時であった、

 

 『今日の目玉商品』の看板を取り換えるための足場が、こちらに向けて倒れてきた。


「危ない」

 私はそう叫ぶと、彼女を抱きかかえて横に飛んでいた。

 手首からひじにかけてコンクリートの床でこすれる痛みはあったが、私と彼女は無事だった。

 

 私の顔のすぐ下に、彼女の可愛い顔があった。

 二人の下半身は、私のズボンと彼女のパンツ越しに完全に密着していた。

 動物的な本能で、私のものは瞬く間に大きくなった。

 彼女がそれに違和感を覚えていないのは・・・

(もしかして、彼女、未通女おぼこ?)

 と、私は思った。


 私が起き上がって、

「ごめん」

 と言うと、

「なぜ、あなたが謝るの。助けてもらったのは私よ」

 彼女は、そう言った。

 私は彼女の手を引っ張って、彼女を起こしてあげた。


 焼きとり屋を見ると、おじさんがパイプ足場の下敷きになっていた。

 私がその足場を肩にかついで持ち上げると、おじさんはパイプ足場の下から自力で這はい出してきた。

 おじさんは胸をおさえて痛がっていたが、すぐに到着した救急車に乗せられて病院へ運ばれていった。


 スーパーの中から男性の店員が何人か出てきて、焼きとり屋をたたみ始めた。

 足場の崩落や転倒は、人が亡くならない限り新聞には載らないが、私は車に戻ってカメラを出して、現場の写真を何枚か撮った。


 私が写真を撮り終えて気が付くと、彼女は、もういなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る