第11話 麻美さんの祖父母へのご挨拶
麻美さんと付き合い始めて半年ほどたった頃、私は麻美さんと結婚する決心をした。そして、彼女のおじいちゃんとおばあちゃんのところに挨拶に行った。
私は麻美さんの家に行く前に、焼き鳥屋で麻美さんのおじいちゃんが好きな「砂ずり」をたくさん注文した。
「今日は、麻美ちゃんと一緒じゃなかと? 麻美ちゃんはおらんとね? そやかて、いつも麻美ちゃんが買うていく「砂ずり」ばたくさん買うていくとは、どげんしたと?」
焼き鳥屋のおじさんがそう言うので、私は、
「実は、今日、麻美さんのおじいさんとおばあさんに、麻美さんとの結婚の許可をもらいに行くのです」
と言った。
するとおじさんは、
「そぎゃんこつね。そりゃめでたい、めでたい」
と言って、私の好きな「鳥皮のぐるぐる」と「豚バラのねぎま」をサービス品として付けてくれた。豚バラの味付けは、ちゃんと、「塩」と「タレ」を1対1にしてくれた。
麻美さんも待っている彼女の祖父母の家に行って、私が、
「こんばんは」
と言うと、麻美さんのおばあちゃんが、
「なーい」
と言って玄関に出てきた。
その返事に私は、奈美さんのおばあちゃんは「佐賀出身だ」と思った。
佐賀弁の「なーい」は、「はーい」という意味で、これはいろいろな笑い話に使われる。例えば・・・
「この羊羹を下さい」
と言うと、羊羹屋のおばあちゃんは、
「なーい」
と言った。
(ここにあるのに、ないとは・・・もしかして、私を馬鹿にしているの?)
私がそう思って、もう一度、そこにある羊羹を指さして、
「ここにある、これを売ってください」
「なーい」
私は、羊羹を買わないまま、その店を出た。
・・・という具合に・・・
私が麻美さんのおじいちゃんとおばあちゃんに「福岡毎日日新聞」の顔写真付きの名刺を渡して、
「麻美さんと結婚させてください」
と言うと、おばあちゃんは、
「あなたは、ほんまによか男ね。その上、新聞社にお勤めとは、たいしたものじゃ。
と、即、麻美さんとの結婚の許しがもらえた。
すぐに麻美さんとの結婚の許しがもらえたのは、「砂ずり」の効果ではなく、「新聞社にお勤め」が大きな要因だった。
この世代の人たちは新聞はうそを書かない、正義の味方だと思っているのである。
確かに、「嘘八百」を書けるネットとは違って、新聞には真実に近いことが書いてあるが、その真偽のほどは、自分で確認した方がいいと私は思った。
とにかく、麻美さんは、とても嬉しそうな顔をした。
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