第4話 科学者ルルジン
第三章
こうして深い眠りから目が覚め、僕は少し深呼吸をしながらまだ寝ている燐狗さんの元へ向かった。僕はゆっくりと扉を開け部屋に入った。とりあえずペットの方に行き起こそうとした...しかしそこに居たのは丸まっていた毛布が何故か布団の中にあった。一体どこに行ったんだろうと思い辺りを探そうとしていた時に、ふと後ろから謎の気配を感じた。少し恐怖感に負けそうになったが勇気を出して振り返ってみると突然燐狗さんが僕の髪をなでた。僕はある意味びっくりして腰を抜かしてしまい思わず座ってしまった。そして燐狗さんが僕に抱き着きながらこう言った。
「はぁ... 私極度の子供好きだから...抱っこぐらいしてもいいよね?」
僕は少し恐怖感を感じながらそれと同時に謎の安らぎというか安心感というか...落ち着いているのに恐怖しているという二つの矛盾の感情が僕を襲った。
「はぁ...しばらくこんなかわいい子と抱っこしてきてないからちょっと苛めたくなっちゃった...」
とその時、僕の前から静夏お姉ちゃんの姿が現れた。その表情は今まで見たことのないなんとも言えない表情をしていた。正直ぼくは今のこの体勢についてどういう風に説明をすればいいのか凄い悩んだ。何かとんでもない誤解をされているような気がして言葉にかなり詰まっている。僕が声を出そうとした瞬間、静夏お姉ちゃんが大声を出した。
「ちょっと!?二人で何イチャイチャしているの!?私の目が届かない所で変なことしないで!」
あの濃厚な性格をしている静夏お姉ちゃんからこんなに強くて激しい声を聴いたのは僕の人生では初めてだ。少し恐怖感もあるような声に僕は何故か静夏さんが更に魅力的に感じている。
「はいはい...じゃあ私はしばらくご飯作った後にナカラヴァに連絡するからこの部屋で待っていてね?」
「はーい」
こうして僕たちはこの部屋で待っていることにした。その際、さっきのことを考えるといろんな意味で誤解をされているんじゃないかというちょっとした不安があり何か話題を呼びたいなぁなんで思っていたところにふと目にした小説を手に取って眺めていた。
「タイトルは...『左衛門三郎死す 壱』で作者の名前は『吉良 大河』って言うんだなぁ 静夏さんも読んでみる?」
とぼくがこの小説を一緒に進めてみると静夏お姉ちゃんは喜んだ表情で
「私も興味があるから一緒に読もうかな?」
と言ってきたのでしばらくの間読んでみた。内容は時代劇のような感じで主人公は侍だ。そうして数分が経ち燐狗さんがご飯が出来たから下に置いてと言った。一応僕は子供だけどなんかまるでここの家の子供になったみたいでなんかちょっと嬉しいような気まずいような...変な感情が滝のように沸いた。ごはんの内容は至って普通の魚料理だ。それから僕たちはご飯を食べ、暇つぶしにこの小説のことを聞いてみたら吉良大河はシティーコールズにたまに顔を出すだけで家まではわからないらしいという。そうこうしているうちにナカラヴァの姿が見え始めてきた。ナカラヴァのバイクが凄いスピードで全力疾走し畑道を突っ走った。
「もう少し落ち着いて来たら?いつも困るのよ?」
とりあえず僕たちはバイクに乗り燐狗さんにお礼を言いながら一回分かれた。そしてナカラヴァと会話している最中にふと僕に興味深いことを話した。
「そういえばその小説家だけどたまにうちの店に来るよ 今日も筆を買いにしばらくうろついていたからついその小説家と話して盛り上がっていたからね 楽しかったよ」
「その...吉良大河さんの性格ってどんな感じですか?」
と僕が質問するとナカラヴァから返事が返ってきた。
「吉良の性格?スケールの大きな物語の小説を書いていて今新しい小説を書いているよ そして名前の由来だけど...『大河』は名前にも苗字にもあるという理由で気に入ったらしい」
「へぇー」
そうこうしているうちにどうやら科学センターまでたどり着いたみたいだ。この近未来的なデカい建物に度肝を引かれていたのかしばらく眺めていた。僕の好みがこんな近くまで来て思わず足が止まるところが多く、来てよかったと考えているほどだ。そして門まで近づきいかにも門番みたいな人と話をして許可を得て通してもらった。
「わぁ...中はすごい構造になっている...思わず息をのむぐらい綺麗な建物だね!」
と僕は無邪気な声を出しながら早くその科学者に会いたいという気持ちが抑えられなくなり早歩きになってしまう。そこに静夏お姉ちゃんが落ち着いた表情をしてこう言った。
「はいそこで深呼吸~ 別にこの建物は逃げないから大丈夫だよ 科学者はわからないけど...」
少しジョークを言いながら僕の興奮を落ち着かせようとしている。ぼくはこの人の言うことを聞き、少しずつ落ち着いてきた。
「それじゃあこの建物内を案内しよう まず紹介するのはこの部屋だ」
と紹介された部屋はとても見たことのあるプリンターがたくさん並んでいた。
「これは...3dプリンター?これどうやって作ったの?」
「それはたまたま海に捨てられていたものを使ってここの科学者がわずか一晩で完成させたのさ!」
「その科学者があなたの言っていた、春霖堂にいたAI人形を作った人?」
と静夏お姉ちゃんがナカラヴァに対し質問するとナカラヴァの答えはこう返ってきた。
「そうなのさ!自分のAI操り人形の脳を作ってくれた自分の友人だよ!いつも頭が下がらないよ~ 今呼んでくるからちょっと待ってて」
と勢いよく扉を開きこの部屋を後にした。僕たちはなんとなく周りを見たら吉良大河という作者の小説が置いてあった。こんなところにも小説が置いてあるのを見るにかなり人気が高いようだ。内容は前の時代劇と違ってかなりファンタジー寄りな作風だ。内容としては一人の男の復讐劇で全く違うジャンルをいとも簡単に書いてあるあたり、かなりの文豪かもしれない。しばらく静夏お姉ちゃんと一緒に小説を読んでいると扉の開ける音がし、ナカラヴァと一緒にいる後ろの青い服を着ていてへそが出ている。更に羽織っているものはレトロな白衣だ。下はサイバーパンクチックなズボンを履いているようだ。今風と古風が混ざり合っているファッションにふとその人から口を開いた時に見えた舌が二つに分かれていて本当にスプリットタンをしているんだという印象を与えた。
「これが自分の言っていた科学者、ザウ・ルルジンだよ!いつもお世話になっているんだ~ 機械の製作から医療まで何でも出来るのさ!」
とナカラヴァが説明をするとその科学者がとてつもない微妙な表情をして僕たちにこんなことを言う。
「うちはただ実験と研究を繰り返していただけだよ?それにまだ不完全だし...」
というと静夏お姉ちゃんが春霖堂で見た人形が忘れられないのかこう語った。
「いや...全然すごいよ...!私びっくりして腰抜かしちゃったからな~」
「そ...そう?うちの作ったものが久しぶりに評価されるなんで...」
「せっかくだから何か僕好みのを作って欲しいけど...いいよね?」
と僕が割り込んで話すと気分が良くなったのかルルジンさんが何作る?と聞いてきたから僕はAI搭載の『弓』を作って欲しいって言うとルルジンさんは普通にOKサインを出し作ってもらうことにした。静夏お姉ちゃんは何作って欲しいの?と僕が質問すると私のは大丈夫だからいいよと言う。
「あれ?珍しいな?あんたがそういうものを作るのは 久しぶりに褒められて気分が上がったのか?」
「まぁ、ここの住民たちは最初はうちの作ったものとかありがたかって何度もお礼しに来るけどだんだん当たり前になってその感動が薄れていたからねぇ大分久しぶりに感動してもらったからせっかくだし無料で作るよ 0より下は無いからね それにうちの悩みを解決してくれそうだし」
「悩み?もしかして天才過ぎて実験に飽きたとか...?」
「いや違う 最近飴がゲリラ豪雨のように降るからいつか元になった神様の幼い心を説教したくて...でもうち研究で忙しいし他の人に頼もうにも興味がなさげだしで大変だよ?」
「それって姿忌が言っていた空から飴が降ってくる怪奇現象?」
「うん そうなんだ だからその元凶にお仕置きしてほしいから弓を作るのは無料にしてもらったんだ」
「ところで場所は知っているの?その元凶になった人の場所の場所まで行ければ楽なんだけどなぁ」
と質問するとナカラヴァの答えから予想外のものが返ってきた。
「場所だったら一応自分知っているけど今から行く?」
「え?行けれるの?そんな簡単なことある?」
と僕が不思議そうにしていると突然後ろから聞いたことのある声が聞こえた。
「姿忌ちゃんどうして急にうちの研究所に来たんだ?もしかしてうちの新商品を買いに?」
「それはその二人がどこか遠い遠い場所にあると少し確信しているからです もしかしたら既に会っているのかもしれない...かしらね?」
と意味深な事を言いながらルルジンさんの所に行きその新商品とやらを購入ししばらく暇をつぶしていた。その際にとあることを姿忌さんに質問をしてみた。その内容は...
「ずっと思っていたんだけどなんで僕たち二人でその飴を降らせる人にお仕置きしなければいけないの?他の人でもいい気がするんだけど?」
そんなようなことをふと姿忌さんに行ってみると予想外なことが返ってきた。
「実は前に言っていた現役で引退した話は全部嘘なのです 本当のことを言うと今までこの私が神の中にある幼い心をお仕置きしてきたのです ですがあなたたちの姿が以前どこかで会ったような気がしたからもしかしたら...そんな感じなのです」
「会ったこと...?いや僕たちは姿忌さんに初めて会いましたけどそれにこの場所にも前に来たことないし...なんだか不思議だなぁ」
「そうかしら?でもこれも何かの縁ということでとりあえず目標の敵を倒すのです それがあなたたちの初仕事なのです」
そんなことを言いながら幕を使いその場から消えた。本当に唐突なことに結構驚いていたから唖然としていたところにルルジンさんが例の弓が完成したと言っている。ものすごい速さで弓が完成し、それを見て僕は本当にこの科学者は天才なのかもと思いその場に立ち尽くしていた。
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