第2話 AI人形

第一章

町に着いた僕たちはその辺をうろうろしていた。この明治時代と大英帝国を合わせたみたいなレトロな雰囲気で店がたくさんある。そして家も建っている様子からどうやらここで皆暮らしているみたいだ。住民を見ると意外と老若男女平等にいる。とても奇妙なところだなぁと考えながら静夏さんと一緒に会話をした。

「なんだか不思議なことだらけで僕もう疲れちゃったよ あそこの店に入って一休みでもしようよ」

「確かに...私も少し疲れてきたからあの春霖亭って書いてあるおしゃれな茶屋で休むとするかな?」

そうして少し小声で失礼します...と言いながらおしゃれな店に入った。その際、店の中はうす暗くてなぜか店主が全くいないのに微かに気配を感じる。周りを見てみるとそこにはパソコンが置いてあった。そのパソコンを覗いて見るとzoom的な画面に切り替わりピンク髪の目立つ人が写っていた。

「一体誰なんだ?」

と僕が質問をするとパソコン越しの相手がその質問に答えてこう話した。

「自分の名前はシュンリン・ラブレイ・ナカラヴァ 一応これでも魔法使いさ まぁ普段は店にいないから何とも言えないけどとりあえずゆっくりしていてよ このワンダーな世界をね」

「ところでナカラヴァ君は今どこにいるの?私の目にはこの町にない野原に見えるのだけど...」

「ん...?あぁ、自分は今混惑の森というところにいるさ 近くに家があるから今はただ一休みしているだけだよ でも店はちゃんとやっているよ?ほら後ろに人g...」

と言い切ろうとした瞬間、静夏さんが突然悲鳴を上げうずくまった。なんのことが分からずに後ろを振り返ってみるとそこに居たのは人形だ。しかも勝手に動いている。見た目は高校生ぐらいの女性で金髪碧眼のなんとも言えない人形がこのうす暗い店の中にいると軽くホラーを感じた。

「ナカラヴァ君あの人形なに!?私すごいびっくりして変な声が出ちゃったよ!?」

僕はこんな表情をする恩人の顔を初めて見た。動いている人形もびっくりしたが正直なことを言うと恩人である静夏さんの表情が一番びっくりしたかもしれないと思うほどだ。その人形のことをナカラヴァに聞いてみた。

「この人形は何で出来ているの?」

するとこんな答えが返ってきた。

「それはルルジンが作ったAI搭載の人形なのさ! 名前はハス・タニアールス・ルイというアンドロイドだよ~ ちなみにルルジンの特徴は舌が蛇みたいに分かれているよ」

「場所はどこにある?ちょっと僕興味があるから今から行きたいけど...」

少し興奮した声を出しながらついでに場所のことを教えてもらおうかなと思っていたが、つい喋ってしまったみたいだ。それについてナカラヴァが場所を丁寧に教えてくれた。

「あぁ、そこは混惑の森を抜けた先にある畑を抜けた先にあるよ。ただそこに行くには自分みたいな長年この土地に住んでないと必ず迷って最後に死が待っているのさ こんなうわさもあr...」

「」

また言い切る前に声に出して喋ってしまった。この近未来的な世界観が昔から好きだったからついうっかりしてしまった。

「と...とりあえず自分が春霖亭まで行くからAIの人形と一緒に遊んでいて欲しいのさ その前に一つ、その人形を自分が遠隔で操っているから少し遅くなるけど大丈夫だよね?」

僕は迷わず大声で大丈夫と答えた。静夏さんは少し考えながらまぁ暇つぶしがあるしいいかという表情をしているのをみてしばらく待つことにした。

そして僕たちはうす暗い部屋と共にAI人形と一緒に待つことにした。その際に途中で言っていた畑について質問をしてみるとこんな答えが返ってきた。

「ところで途中で言っていた畑って何を育てているの?」

「その質問なら問題ねーよ 俺が教えてやるから聞いておけよ?めんどくさいから一回しか言わないけどいい?」

と思ったよりも口が悪い印象を持ったけどなんだかんだ言って教えてくれる辺り、いいAIなのかもしれない。

「その畑の名前は月の畑と言われているもので不思議なことに一年中月下美人が咲いていて絶対に枯れないとされているんだよ 住民の名前は... 弓月 燐狗様です」

こうしてこの世界のことを色々聞きながら時間が経ち、扉の前に人影が見えてきた。

「お待たせ~ それじゃあ自分が案内人になるから早速行こう!」

「それで行くにはどうやって行けばいいんだ?歩き?」

「いや?このバイクに乗っていくのさ ルルジンから貰った特性のバイクを自分のためにくれたのさ! ほら後ろに乗って!二人なら大丈夫だから!」

「まぁ...大丈夫なら私たち乗ります それでいいよね?るいちゃん?」

「まぁ、静夏お姉ちゃんがいいなら僕は大いに賛成するけど...」

と意見を肯定し、一番先頭にナカラヴァ、真ん中に静夏お姉ちゃん、最後に僕が乗るという順番になった。ナカラヴァがレッツゴー!という掛け声と共に最初からフルスロットルでこの町から離れた。

「ここから森まで何分ぐらい掛かる?」

「うーんと...バイクで行って大体13分ぐらい?で到着できるのさ」

「意外と近いのね...私もう少し遠い場所にあると思っていたよ?」

「それで森ってどんな感じなの?」

「それはねー 人間が足を踏み入れることが少ない森なのさ!森自体は割と低めだけど自分たちみたいに長年いると耐性が付いてなんともないけど耐性がない人が長時間いるとまるで高山病にかかったように体調を崩してしまうのさ!だからバイクで行かないと命に関わる重大な事なんだ でもその森は危険に反してとても綺麗なのさ!自分はいつもそこで花見をしているよ」

「私たちでもバイクで行けば大丈夫なの?それを聞いていると私凄く不安になるのだけど...」

「大丈夫!そのためにルルジンから作ってもらったバイクだから問題はないのさ!」

その後ナカラヴァと一緒に会話などをして時間が経過し、前方から森らしきものが見えてきた。

「あれがナカラヴァの言っていた混惑の森?桜と紅葉が同時に咲いている?もしかして四季桜なのか?」

ナカラヴァが不思議そうな顔をして

「あれ?四季桜知っているんだ?」

と言ってきた。僕はそれに答えるように質問を返した。

「静夏お姉ちゃんという恩人のおかげで実際に見たことがあるよ だから今ここで披露しちゃった」

その瞬間、静夏お姉ちゃんが喜んだ顔をしながら僕の方に向って頭をポンポンしてきた。

「まぁそれはさておき、このバイクで科学センターまでエンジン全開で行くよ!」

急加速して若干振り落とされそうになりながらもしっかり付いて行き桜と紅葉の間を走っていった。

「ちなみに森の中にも施設はあるけど君たちにはまだこの森に慣れていないからとりあえず後日改めて行ってみるかい?」

「体を慣らすことって出来るの?私たち出来そうにない気がするのだけど...」

「なぜか君たちなら大丈夫という謎めいた確信があるんだ きっと大丈夫だよ」

「ところでさっきからもうすぐ着くよっていう看板がたくさんあるけどあれ何?僕凄い気になってて」

「あれは偽装してあるだけだよ」

と色々な会話をしてから大体役30分ぐらいでだんだん景色が変わりふと見えた看板にはご丁寧にもうすぐで着くよと書かれていた。それをナカラヴァに言うと

「さすがにあの看板は本物なのさ だからもうすぐで月の畑が見えるよ」

そして森を抜けた先にある景色に僕たちは滅茶苦茶驚いて思わず感動した。

「四季桜もいいけどこの大量に咲いてある月下美人もすごい綺麗だよ!」

「これがAI人形の言っていた枯れない月下美人なのか...」

その美しさに思わず息を呑んだ。この世のものと思えないと考え、ずっと見惚れていた。

第一章 終

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