第12話 獣変黙示録終幕
現世時間:1月26日
「空様、ご朝食の準備が整いましたわ。」
とセフィエルが部屋に入ってきた。
「うん、今行くよ。」
空は伸びをして起き上がると部屋を出る。
「こちらですわ。」
とセフィエルが案内してくれる。
案内された席に着き、朝食を食べる。
「美味い。これセフィエルが作ったの?」
「空様に喜んでいただけて光栄ですわ♡」
とセフィエルは嬉しそうに微笑む。
「ご馳走様。」
と空は手を合わす。
「お味はどうでしたか?」
セフィエルは空の隣に座り、顔を近付けて聞いてくる。
(近い……)
空は思わず後ずさるが、椅子の背もたれに阻まれる。
「あゝそのお顔たまりませんわ♡」
とセフィエルはうっとりした表情を浮かべる。
(怖いよこの天使……)
と内心思いながらも、
「美味しかったよ。」
と答える空。
「それはよかったですわ♡」
セフィエルは満面の笑みを浮かべる。
「それで、今日は何をすればいいんだ?セフィエル。」
と空が質問する。
「そうでございますわね……空様はマナはご存じで?」
「ああ。蒼さんに【マナ】、【能力】、【特性】。この3つを教えてもらったよ。あとマナ技術についても。」
「それであればお話は早いですわ。」
セフィエルは両手を合わせてにっこりと笑う。
「僕にも【能力】とか【特性】があるんだろ?」
「ありますわ。」
とセフィエルは答える。
「僕にはどんな【能力】と【特性】があるんだ?セフィエルなら知ってるんだろ?」
「そうですわね…今の空様が扱えるものは【能力】は【天使支配】、【特性】は【天使契約】【天使召喚】ですわ。」
とセフィエルは答える。
「え?なんか凄そうなのが……」
空は少し期待に胸を膨らませる。
「まず【天使支配】は契約した天使の【能力】【特性】を使用することができますわ。次に【天使契約】これは文字通り天使と契約ができますわ。契約の条件は天使によって違いますわ。そして【天使召喚】これも文字通り契約している天使を召喚することができますわ。まずは天使と契約することが大事ですわ。」
とセフィエルが丁寧に説明する。
「それくらい落ち着いてくれてる方が助かるよ。」
と空は小声で呟いた。
「何か仰られましたか?」
とセフィエルが反応する。
「いや、何でもないよ。」
空は誤魔化した。
「では早速契約してみましょうか?」
とセフィエルは提案する。
「そうだね、でもどんな天使と契約すればいいんだ?マナもまだ完璧なわけじゃないしそこらへんも考慮しないと。」
と空は悩む。
「それは心配ございませんわ!わたくしがお教えいたしますから!」
とセフィエルは胸を張る。
まるでわたくしを契約する天使の第一号にしてくれと言わんばかりだ。
「わ、わかったよ。じゃあお願いしようかな」
空は苦笑いしながら答えた。
「空様、お手を。」
セフィエルが手を出す。
空はそれに応じるように手を添える。
すると、空とセフィエルは青白い光に包まれる。
(あたたかい……)
光は数秒で収まる。
「これで契約完了ですわ!」
セフィエルが嬉しそうに言う。
「え?もう終わりなの?こういうのってもっと長い呪文みたいなの詠唱するのかと思ってた。」
と空が驚く。
「そういうものですわ。これで空様はわたくしの【能力】と【特性】を自由に使用することができますわ。それと、【天使契約】の副効果で空様のマナ総量が300万から1000万になりましたわ。」
とセフィエルは説明する。
「そんなに!?ちょっと多すぎない?」
空はマナ総量が増えたことに驚く。
「それだけのポテンシャルをお持ちだということですわ。」
とセフィエルがドヤ顔で言う。
「でも、それだけあってもまだ僕が使いこなせないんじゃ意味無いんだよな。」
と空は呟く。
「それはこれからの努力次第ですわ!わたくしも微力ながらお力になりますわ!」
セフィエルは目を輝かせて言う。
「ありがとう助かるよ。」
空は素直に感謝する。
「空様。マナ技術は何がお使いになられて?」
「今僕が使えるのは〈霊豪〉だけ。他のは名前も使い方も知らない。」
「〈霊豪〉が使えるだけでもすごいことですわ。他のマナ技術も今からお教えしますわ。」
セフィエルによるマナ技術教室が始まった。
『マナ技術は大きく
霊【豪・仙・静・乱・影・霹・重】に分けられますわ。他にも応用技がありますけれどここでは割愛させていただきますわ。
〈霊豪〉(れいごう)
マナを強化したい部分に流し込んで身体強化する技ですわ。纏うように流し込むんで使用する方法。マナを体の中から流し込む方法がありますわ。後者の方が威力は高くなりますけれどその分、身体への負担も大きいですわ。
〈霊仙〉(れいせん)
マナを使った身体回復技ですわ。浅い傷を治すことに長けていますわ。他者に使用するとマナを回復することもできますわ。
〈霊静〉(れいせい)
マナの残滓を作る技ですわ。わかりやすく言うと影分身みたいなものですわ。
〈霊乱〉(れいらん)
発するマナの波を乱す技ですわ。習得難易度は高いですわ。
〈霊影〉(れいえい)
マナで位置を感知する技ですわ。マナがあるものにしか通用しないから注意ですわ。これも習得難易度が高いですわ。
〈霊霹〉(れいへき)
マナを発散させる技ですわ。ビームやエネルギー弾に近いものだと思ってくれていいですわ。
習得難易度は低いですけれど応用技が多いですわ。
〈霊重〉(れいじゅう)
マナで防御する技ですわ。最も習得難易度が高いですわ。扱えるとかなり強力ですわ。』
「なるほどね。」
空は頷く。
「基本はこのくらいでしょうか?何か質問は?」
セフィエルが聞く。
「マナ総量はどうやって増やせばいいの?」
と空が質問する。
「そうですわね……明確な条件はにですわ。ですが相当な努力が必要ですわ。空様の場合はお話した通り【天使契約】の副効果で増えますがこれだけに頼るのは得策ではないですわ。」
とセフィエルは言う。
「そっか……」
と空は考え込む。
「何かありましたらいつでもお尋ねくださいまし。」
とセフィエルが微笑む。
「うん、ありがとう。」
空は素直に感謝するのだった。
「では空様、本日は何をなさいますか?」
とセフィエルは尋ねる。
「とりあえず僕を現世に帰して。イリア達が待ってるんだ。」
「承知いたしましたわ。」
セフィエルは頷くと、指をパチンとならす。
すると扉が出現する。
「この扉を通れば現世に帰れますわ。わたくしは単独ではそちらへ行くことができませんので空様が現世にお戻りになさった後、召喚してください。」
「わかった。行ってくるよ。」
空がドアノブに手をかけると、セフィエルは不安そうにする。
「お気をつけくださいまし。」
「ありがとう。」
空はドアノブを回し、扉を開けると中へ入っていった。
扉は部屋に繋がっていて見覚えのある顔が並んでいた。
「空!」
まっ先に空に飛びつくように抱き着いたのはイリアだった。
「ただいまイリア心配かけたね。」
空はイリアの頭を撫でる。
「ううん……私こそごめんなさい……」
とイリアは涙ながらに謝る。
「大丈夫。僕は無事だから。」
と空は優しく諭すように話すのだった。
「無事でよかったわ。」
「空、おかえり。」
「蒼さん、猛隊長。ご心配おかけしました。律那もただいま。」
と空は蒼、猛に頭を下げる。律那は「気にするな」と返す。
「空が連れ去られたイリアを追いかけていったと聞いたときは急いで蒼の所に行ったよ。」
律那が軽く笑いながら言う。
「気持ちはわかるがな。」
猛も微笑む。
「ご心配おかけしてすみません……」
と空は謝罪する。
「それで、何があったんだ?」
律那は質問してくる。
「はい……実は……」
空は事の顛末を話すのだった。
「そんなことが……大変だったんだな。」
律那は労うように言う。
「あ、呼ばなきゃ。【天使召喚】セフィエル。」
空はセフィエルを召喚する。
「空様、遅いですわ。」
と頬を膨らませたセフィエルが出てくる。
「ごめんよ。」
と空は謝罪する。
「そちらの方がセフィエルか?」
律那が聞く。
「そうだよ。セフィエルこちらが地球防衛軍第三部隊の天紋路猛隊長、玉超蒼さん、渾亡律那。
律那は三重人格で主人格の刹那ともう一人の人格の越那がいる。」
空はセフィエルに紹介する。
「わたくしは裏界第2区界 天庭 座天使階級 セフィエルにございますわ。以後お見知りおきを。」
とセフィエルはスカートをつまんで礼をする。
「空を助けてくれたこと感謝する。」
と猛は頭を下げる。
「気になさらないでくださいまし、空様はわたくしの主ですから当然ですわ。」
セフィエルは胸を張る。
「話を変えよう。空、イリア。今回の異変解決の報酬だが空とイリア合わせて2740億円支払われる。空には必要書類を書いてもらう必要があるからあとで来てくれ。」
と猛は告げる。
「2740億⁉」
と空は驚きの声を上げる。
「これに関しては後で連絡しよう。書類も後日でいい。そして2人は仮入隊状態なわけだが今回の異変解決に伴って正式に入隊許可が出た。どうするかは任せる。」
「どうする?イリア。」
と空が聞く。
「私は……私の記憶を知るためにも入りたい。」
とイリアが言う。
「わかった。僕も同じ気持ちだよ。」
空は微笑んで答えるのだった。
「これで正式に仲間だな!よろしくな空、イリア。」
「よろしく律那。」
「私も嬉しいです。」
「蒼さんもこれからよろしく。」
「では、手続きはこちらでやっておくから2人は帰っていいぞ。セフィエルさんもご苦労だった。」
猛はそう締めくくる。
「わかりましたわ。では空様、イリアちゃん、帰りましょうか。」
セフィエルは空に提案する。
「そうだね。じゃあまたね蒼さん律那。」
と空は別れの挨拶をする。
「ああ、いつでも来いよ!」
と律那が手を振りながら答える。
「気を付けて帰れよ。」
と猛は返事をするのだった。
そして空達はその場を後にした。
「空様、この後はどういたしますか。」
とセフィエルは尋ねる。
「裏界に戻るかな。マナ技術を習得したいし。イリアはどうする?」
「私も空について行く。」
とイリアは即答する。
「では裏界に戻りましょう。」
2人はセフィエルの呼び出した扉で裏界に戻るのだった。
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ひどい吐き気だ。頭痛もして気持ち悪い。
『大丈夫かよ刹那。』
「いつものことでしょ。」
『また酷くなったように見えるよ。』
「心配してくれてありがとう。越那。」
血まみれの部屋、鉄のようなにおい、死体、毎日寝るたびにこの風景を夢に見る。
「お姉、お兄、ママ。なんで」
刹那は涙を流す。
「律那と越那は私の前からいなくならないよね。」
『当たり前だ。』
『いつでも一緒だよ。』
その言葉に安心して刹那はまた眠りにつくことができた。
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