センスZEROの地図師 2
ム月 北斗
迷宮迷子:賭博罠編 前
さて・・・・・・あれからオレ達は、ダンジョンの床をぶち抜いて作った大穴を通り(落ちてか?)、ダンジョンの地下二階へと降り立っていた。
ダンジョンというのは決まって、大抵は地下へ進むほどおどろおどろしい様相なのだが、意外にも小綺麗・・・・・・というか殺風景だった。
オレ達が降りた部屋はとても広く、部屋の端っこは暗くなっていて確認が難しいほどだ。唯一シルエットがハッキリと確認できるのは、部屋の四隅に建っている太い柱くらいだ。
オレは魔法で明かりを灯し、みんなを連れて部屋の中を歩いて調べた。
部屋を照らすとそこら中に、長椅子が乱雑に置かれているのが分かった。長椅子には毛布のような布が敷かれており、大きな砕けた天使像へと向いていた。教会のようにも思えるその様を見て、薄気味悪さを感じた。
さらに部屋の中を探索すると、部屋の出入り口と思わしき大きな扉の前に辿り着いた。
重厚な鋼鉄製の扉で、禍々しい悪魔のような顔があしらわれている。
ブラは即座に扉を押してみた。が、扉はびくともしない。
「なんだこれ?重いっつーかなんつーか・・・・・・ぜってー開かねえ、って感じだぜ」
ふむ、罠というよりか何かしらの仕掛けのある扉、といったところか。
例えば・・・・・・部屋にある本を指定の位置にする、とか。あの乱雑に置かれた長椅子を整列させる、とか。
こういった仕掛けというのはよくあるものだ。冒険者であれば一度は目を通す冒険者必読の参考書、『ヒザニヤの書』にも書いてある。
色々と解決策を練っていると、ポケーッとしてたフェノンが紙を渡してきた。気づかないうちに何か書いていたようで、紙にはこう書いてあった。
『罠名:
・・・・・・なるほど、恐ろしい罠だな。というか、フェノンが自分から行動したのか?あの、ポケーッとしてる
「さて・・・・・・んで?どうやってその”勝負”とやらを始めることになるんだ?」
フェノンに聞いてみたが、彼女は首を横に振るだけだった。そこまでは知らんと、はいはいそうですかい。
その後、オレ達はいろいろ扉にやってみた。
ブラはもう一度扉を押してみたり、渾身の力を込めた蹴りをお見舞いしてやったが、扉に変化は無かった。
オレはとりあえず魔法攻撃を当ててみた。しかし結果は同じで、炎も氷も全く効果が無かった。余計な消耗は避けるためにも、それ以上は攻撃をしないことにした。
そうしたら驚いたことに、あのフェノンが扉の前に立った。オレは、「お前みたいな戦闘能力皆無の奴に何が出来るってんだ?」と茶化した。するとフェノンは、そこらに落ちていた小さな石ころを、扉に向かって「えいや」と投げつけた。広い部屋に弱弱しい金属音が虚しく響いた・・・・・・
戻ってきたフェノンは満足げに「むふん」としてみせた。お前はなーんにも出来てないんだが?
そんなこんなをしていると、順番的にもバンディの番になった。本人曰く元”盗賊”、鍵開けであればちょちょいのちょいであろうがこれは罠の扉だ、持ち前のスキルであっても罠に効果は無いだろう。いや、罠だったら解除できるのか?
「さぁて、そんじゃこのバンディさんが、華麗に扉を開けちゃいますかね」
「やっぱりあれか?罠だから盗賊のスキルで開けられるのか?」
「やってみないと分かんないけど、まぁ任せなさいな」
片手に持った、鉄製の輪っかに束ねられた数多くの盗賊道具を、器用に指先で回しながら、調子のいい足取りでバンディは扉へと歩いて行った。
そして扉の前に着き、いざ解除・・・・・・しようとしたその時、扉の悪魔の顔の瞳が怪しく光り、重々しい声が部屋の中に響いた。
「我ガ 眠リヲ 妨ゲルノハ 何者カ―――――」
その声は空気を伝って部屋全体を震わせた。天井からは、パラパラと埃が落ちてくる程だった。
「今の・・・・・・まさか、その扉か?!」
「でしょーな。見ろよアドネス、扉がまさしく『起動した』って感じだぜ?」
扉の前にいたバンディは、ゆっくりと後ずさりをしてこちらへと戻ってきた。フェノンはてっきりビビッて後ろに隠れてると思っていたが(どうせ戦闘能力皆無だし)、眼をキラキラと輝かせてまるで、「すげー!かっけー!!」みたいな感じだった。
「我ガ 眠リヲ 妨ゲルノハ 汝ラ カ?」
扉は重々しい声でオレ達に聞いてきた。
「あぁ、そうだ!この部屋から出て、ダンジョンの奥へと行かなきゃならない!」
「ナラバ―――――」
扉はそう言うと、少しためて言い放った。
「ナラバ―――――我ト 勝負 シロ―――!!」
センスZEROの地図師 2 ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
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