第1話

"……週連続オリコンチャート1位、Dearのみなさん、おめでとうございます‼️"


満面の笑みで興奮ぎみに司会の女子アナが伝えると


リーダーでギター Aoi 「ファンのみなさん、ありがとうございます‼️」

ドラム Taka 「嬉しいです」

ベース Halu 「ありがとう~~~‼️」

最後に、

ボーカル Kyo 「どーもです」


おのおののメンバーが答える。


画面いっぱいに映しだされるメンバーに、胸の奥がきゅって痛んだ。


「実は今日曲を披露する前に、テレビを見てるファンのみなさんにお知らせがあるんです」


Aoiの言葉に、司会の女子アナが「え~っ、何ですかぁ⁉️」と質問する。


メンバーは顔を見合わせてニヤリと笑い、


「この度、おれたちDearの初の全国ドームライブが決定しました‼️」


「うわぁ‼️おめでとうございます‼️

全国のDearファンのみなさん大喜びですね‼️」


「詳しい内容は今後お知らせしますので楽しみに待っててくださいね‼️」


画面の向こうのAoiの言葉に、私は眼の奥が熱くなり胸元をきゅっと握りしめた。




「Kyoさんからもファンのみなさんに何か一言お願いします」

女子アナがkyoにマイクをむける。


「ツアーで全国回るので楽しみです。

みんな会いにきてくださいね‼️」

kyoが笑顔で答える。



「今から楽しみですね‼️------では、準備ができたみたいなのでみなさん、お願いします」




kyoの声を、歌ってる姿を見る勇気がなくて。

私は慌てて、曲のイントロが流れだすと同時に、テレビの電源を落とした。


まだ、まだ、だめだなぁ。


あれからいくつかの季節が過ぎ去ったのに、私の心から、kyoのほんとの笑顔が消えなくて。


"な~ち"


彼が甘く 優しい声で私の名前を呼ぶ。


恭……。

思い出すだけで、まだまだ私の心は悲鳴をあげる。


自分で決めた選択(こと)なのに、弱い部分の私が時々顔をだし責め立てる。


その度に、呪文のように繰り返す。


"これでよかったんだ……と。"


kyoの生きる場所は守らなきゃ。

私の大事な大事な人だから。

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