コワい話

さやまる

M県S市 潰れた映画館

 僕は今、友人たちと肝試しに来ている。

 M県S市の外れにある、閉鎖された映画館。誰もいない、誰も来ないはずの場所。

 ここは長い間廃墟として放置されていて、朽ち果てた外観と、まるで吸い込まれるような暗闇が、不気味に僕たちを迎え入れていた。


 でも、妙なことが起きている。

 劇場の中から、映画の音が微かに聞こえてくる。誰もいないはずなのに、映画が上映されている? そんなこと、ありえない。


 一緒に来た友人たちはふざけながら散り散りになった。僕は好奇心に駆られ、音がする方へと足を進めた。ホールの扉は開いていた。

 暗い空間の奥、スクリーンに映るのは……エンドロール。


 無言のまま席に座り、その終わりかけた映画を見つめる。

 15分ほど経っただろうか。長いエンドロールがただ流れ続けている。

 退屈だ……何の変哲もない映画の終わりにしか見えない。黒い画面に白い文字がただ流れているだけで、やっぱりつまらない。


 そう思って、立ち上がろうとしたその時だった。


「映像制作:佐藤和夫、佐藤由美子」

 スクリーンにその名前が映し出された瞬間、心臓が跳ねた。

 佐藤和夫、由美子――僕の父さんと母さんの名前じゃないか……まさか、偶然?


 さらにエンドロールは続く。


「終:佐藤達也」


 体が硬直した。佐藤達也――なんで、僕の名前が……。

 背中に冷たい汗がじわりと滲む。頭の中が真っ白になり、スクリーンに釘付けになった。


 しかし、次の瞬間、スクリーンの画面が突然ブラックアウトし、劇場内は完全な暗闇に包まれた。音も何もなく、静寂だけが支配する。

 その時、劇場の後方からかすかに……誰かの足音が聞こえてきた。


 僕は振り返ることができなかった。


 その足音は、確実に、僕に近づいてきている。









 あ。きた。

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