ボウガ

第1話

「……ということで、先進国で唯一といっていいほど、少子化の克服に成功し、唯一人口が増えている、決めては何ですか?」

「まあ、支援もそうですが、一番は内向きのいがみ合いがなくなったことですね、お互いが貴重な存在であることを理解した」

「男女が?」

「ええ、そうです、これは狙って計画されたものではなかった、皆さんご存じのように」

「確かに、たしかにそう記憶しております、悲惨な実験が行われた結果、脳意外をその……人工的なものに入れ替える実験を行った、それは高度な医療が発達し、健康的な都市が発達したからこそ、起こりえたことだった、まさか古い伝染病が流行するなんて、健康的な国である分、防衛機能がよわかったんでしょうか?」

「まあ、そうですね、軍事力にはお金を使っておりますが、教育の質も落ちてきている、だが労働力さえあれば、万事解決ですよ、彼らのほとんどは滅ぶはずだった人間です、新しい機械の体をえた彼らを“パーツ”とよんでいます、そのほとんどが、やはり同じような“パーツ”として生を受けることになりますが、問題ありません、彼らへの差別こそ、人類の進歩を遅らせる」

「確かに、医療が進歩したのだから、より一層進歩させればいいだけです、それでBさん、こんなうわさを聞いたのですが、“パーツ”となった者たちは、ある資本家の血を引いているとかいないとか、まあ、噂話ですけどね」

「ありえない事です、陰謀論ですか」

「そうですよね」

 

 ここでアナウンサーはインタビューを終えた。しかし、オフレコで話が続く。

「さっきはあんな事いったけど、あれは事実ですよ」

「え?そうなんですか?」

「実際、私にもその血が流れています、色濃くね、ですが、その“資産家”が生きていた時代はひどく、労働者同士がいがみ合い、容姿も、能力もひどく内向きにガラパゴス的に仲間同士で競い合っていたのです、彼はある時期まで資本主義万歳、事業の成功万歳、成り上がり万歳、といった感じで楽しくやっていたんですが、ある時期から少子化に心から絶望し、様々な宗教や哲学に触れて、豹変したんです」

「そこへあのパンデミックが?」

「そういう事です、ここだけの話、第一世代の“パーツ”は全部彼のクローンです、つまりこの国は本来であれば滅びていて、性欲の強い彼によって回復の兆しを得たんですよ、そしてそれは今もつづいている」

「まさか……」

 アナウンサーは言葉を失う。しかし、気のせいではなかった。サングラスを外したBの顔は、件の資産家の若いころそっくりだった。

「弱った国、内向きに仲の悪い人々というのは自分の思考を変えることはできない、私ももう少し若いころは、この政策に反対でした、ですが彼らは自分で選んだんです“自分の代わりに誰かが考え、栄え、自分たちは支配をされる、その利益をむさぼる楽園を”彼らは相変わらず信頼している、少ないポストを競い合い、誰が一番成功者の富を横取りし、中抜きするかばかり考えている、仲間同士、同じ国民同士でいがみ合い、けなしあいます、でもいいんです、労働者でしかないのですから」


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ボウガ @yumieimaru

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