第12話 ごめん年賀状

今年も年賀状の季節がやって来ました。


昨今は年賀状じまいされる方も多いそうですね。

矢芝は今年も書く予定です。


年賀状だけのやり取りとなってしまった友人も多いですが、それでも近況を伝え合うよすがだと、矢芝は思っています。


矢芝たちの世代は、互いに実家を離れた頃は、まだ携帯電話も電子メールも、全員が使っているという訳では無かったので、住所しか知らないという友人知人は、少なくないのです。



何年か前のことです。

いつも元旦、もしくは三賀日に届いていたある友人の年賀状が、遅れて来るようになりました。


忙しいのかな。

仕事始めたとか書いてあったし。


それくらいの気持ちで、矢芝は次の年も変わらず年賀状を出し、友人の年賀状は遅れて届きました。


で、やっと気付いたのです。


矢芝が年賀状を出すから、その返事をわざわざ書いてくれているんだ、と。

もうきっと、この友人は、年賀状をやめてしまっているのだ、と。


あーーー、ごめんね。


年賀状もそのために買ってくれてたんだね。



その年から、矢芝はその友人への年賀状をやめました。

友人からも来ませんでした。


寂しいというよりは、今までありがとう、という気持ちです。


繋がれなくなってしまった友たち。

もしまた縁があったら、その時はよろしくね。


繋がってくれている友たち。

こらからもヨロシク!

ここまで来たら、人生の終わりまで行っちゃおうか!



年齢を重ね、人生のステージが変わって行き、体調も時間も、自分の思う通りには動かせなくなっている…


それが矢芝たちの年代だから。


なるたけ元気で居られるといいね。

元気じゃなくても、ゆるゆるっとやって行けばいいよ。


さて、年賀状。


プリンターの無い矢芝宅では、スタンプと手書きの、レトロな手作り年賀状です。


印刷がお高いからなんですけどね。

昔ほど枚数を書かなくなったし。


じゃ、そろそろ買いに行きましょうか。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る