おじいちゃんと〝おんなじ〟

真留女

第1話 おじいちゃんのおうち


 かっちゃんはおじいちゃんの家に行って、おじいちゃんとはたけに種をまいたり、できた野菜をとって食べたりするのが大好きです。

でもおじいちゃんは今、おもい病気になって入院しているので、今までみたいに遊びに行くことはできません。

しかたがないけどかっちゃんはさみしいのです。


 ある夜、寝ているかっちゃんをお母さんが起こしにきました。

「う~ん、ねむたいよ~」と言ってもお母さんは

「はやく起きて、はやくはやく」というだけです。

車に乗ると、お母さんはお父さんに「今日は私が運転するね」と言って、運転席に座りました。お父さんは助手席でだまっています。

 車が動き出すと、眠くてたまらないかっちゃんは後ろの席でうつらうつら眠ってしまいました。


 なんだかとってもまぶしくて、そっと目を開けると目の前におじいちゃんがいました。

「おじいちゃ~ん」かっちゃんはおじいちゃんに抱きつきました。

 おじいちゃんがギュギュっと抱きしめてくれると、大好きなおじいちゃんのにおいがします。

 ここはおじいちゃんのおうちだ、と思うんだけど、いつものおうちとは少しちがいます。

 ゆかやかべや窓がピンクやきいろや水色でとってもきれいです。外を見ると、いつも茶色かみどりだけだったはたけがいろんな色のお花でいっぱいです。

「きれいだね」

 おじいちゃんに言うと「そうだろう」とおじいちゃんもにこにこです。

 おじいちゃんとかごを持ってはたけに行ってお花をいっぱいつんできました。かっちゃんはいつものようにおじいちゃんのおひざにのって、お花をお皿に並べます。

「食べてごらん」

 おじいちゃんがいいました

「食べられるの? どんなあじ?」

 かっちゃんはちょっとこわいです。

「かっちゃんの食べたいもののあじだよ。かっちゃんは何が食べたいかな?」

「う~んと、キャンディ」と言って赤い花の花びらを口に入れると、それはあまいあ まいイチゴのキャンディのあじがしました。

「ハンバーグは?」とおじいちゃんに聞くと

「もちろん」とおじいちゃんが言いました。

 じゃあじゃあ、このきいろい花だ! パクッ! たちまちハンバーグのあじが口いっぱいにひろがります。

「おじいちゃん、ここは新しいおうちだね。ここ楽しいね」

 かっちゃんが言うと

「ああ、ここはおじいちゃんの新しいおうちだよ。これからおじいちゃんはずっとここでくらすんだ」とおじいちゃんはにっこりしてから、少しまゆげを下げて

「でもね、もうかっちゃんとは遊べないんだ」と言いました。

「えっ! やだやだぼくはず~っとおじいちゃんと一緒にいたいよ」とかっちゃんが  言うとおじいちゃんはかっちゃんのあたまをなでて

「そうだね、おじいちゃんもずっとかっちゃんと遊びたいけど、できなくなっちゃったんだ。でもおじいちゃんはずっとかっちゃんと一緒にいるんだよ。ほら」とかっちゃんの目の前に手のひらを出して、指をまげて見せました。

するとおじいちゃんの四つのつめが一列に並びます。


「にゃんこの手だよ。かっちゃんもやってごらん」かっちゃんが同じような手をすると、あらあら、並んだ四つの細長いつめの形がおじいちゃんとそっくりです。

 おじいちゃんのつめは大きくてぶあついし、かっちゃんのはちっちゃくてかわいいけど、形はおどろくほどそっくりです。

「〝おんなじ〟だね」とかっちゃんが言いました。

「そうだよ、かっちゃんのつめにおじいちゃんはいるんだよ。ずっとずっといるんだよ」

「おとうさんのつめにも?」

「そうさ、おとうさんのつめにもおじいちゃんはいるんだよ。ほら見てごらん」

 おじいちゃんはかがみを見せてくれました。

「かっちゃんのみみにはお母さんがいるだろ」

「ほんとだ、お母さんと〝おんなじ〟だ」

「かっちゃんのまゆげは、かっちゃんが会えなかったお母さんのおとうさんと〝おんなじ〟だ。」

「はなは? だれにも似てないよ」

「それはきっと、おかあさんのおかあさんのおかあさんかもしれないし、おじいちゃんのおとうさんのおとうさんかもしれないね」

 かっちゃんはかがみをのぞいて、みみをひっぱったり、はなをつまんだりしてみました。


「じゃあおじいちゃん、スーちゃんは誰に似てるんだろう?」

 かっちゃんのお友達の山田スーちゃんは肌の色が茶色くてかみの毛がクルクルしてて、お父さんにもお母さんにも似ていません。

スーちゃんのはだやかみやつめは、お母さんのお母さんのお母さんや、お父さんのお父さんのお父さんに似てるんでしょうか?

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