第8話

まるで海に山が立つよう、

その勇壮な姿はとくと目にこびりついた。

「兄ちゃん、どうしよう、このままじゃ島ごとやられちまう」

クリストフは慄くように後ろは2歩下がる。

このままだと皆死んじまう。

しかしながらその目をみた。

海に目玉が5つ、隔たるような

軋轢の中にぱちりと目を見開いた。

いや、違う、ワイズマンはこう思う。

「これは大丈夫だクリストフ。

間違いなく大丈夫だ」

その目を再び見た。そして目を凝らした。

そう、その目の色は母の色と瓜二つである。

「これは母が海に化けたんだ」

それも束の間、

低い音が唸るように聞こえてきた。

それは島の鍵を揺らすように、まるで

一風の立ち風のようにその空間を切り裂く。

『島を守るのよ、そうしてこの島を変えるの、

いい?ワイズマン、クリストフ。もうこの島に魚がいないなんて思わないで、そして、アンダーソン。あなたたちの父親。あなたも救うの。

代々、縛られたその呪いを解くの」

その声とほぼ同時。

時刻は時間軸が動いたかのように

17時に変わった。

島の鉄塔のノイズからその声が聞こえる。

『17時になった。罪人の処刑を執行する』

そのアナウンスを合図に

B地区の方へ目を向ける。

しかし驚いた。誰一人、見物人がいない。

この大雨の影響もあるのか、誰一人として

外に出ていない。むしろ、人を探す方が大変なほど皆自宅にいるようだ。

こんな伝承を思い出した。




 海の神、ネプチューンが現れるとき、

     誰一人として外に出てはいけない



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