45. 橋の町にて 5

ガチガチ…。


見違える程に大きく、鋭くなった氷弾。

僕はそれを、暴れまわる魔物に向かって撃ち込んだ!


パシュンッ!!!


それは空気を切り裂き飛んでいく。

そして、魔物の右半身に着弾した!


ジュンッー…。


それは周辺を巻き込み貫通し、魔物の右半身をヘドロへと変える。

真っ黒な石油にも似たそれは、地面にどっぷりと散らばったように見えた気がする。


「よーし!」


相手が動き回ってる分、僕にはまだ直撃は難しい。

それでも、相手に特大のダメージを与えることができた!

土埃で姿はかくされちゃったけど、これならやつも時間の問題だと思う。

そのうち、かってに消えてるはず。


「マリン、いけたかしら?」


「まだ生きてるとは思う。 でも半分は消し飛ばしたから、時間の問題かな」


僕は部屋の中へ吹き飛んだ杖を拾い直し、そう言った。


「やるじゃない! それなら、もう安心ね」


「うん。 あとは、勝手に消えてくと思う」


僕らの間に、早くも勝利ムードが流れていた。

しかし。


「おい待てマリン、トーニャ!! 魔物…どこ行ったんだ!?」


「「え!?」」


ハルが、声を荒げた。

それに続くように、僕らは慌てて外を見る。


いまだ、土埃がベールのように隠す。

それが風に晴れていき…。


…!


「まだ終わってない!!!」


窓のすぐ下。

右半身がない魔物がそこに居た!

ヤツは散らばったヘドロを傷口に固め、まだ戦おうとしている。


「嘘だ!?」


「あの化け物、なんて生命力なのよ!!」


僕らが驚いていると、魔物が残った体で建物を殴りつける。

その瞬間、足場に走る衝撃。

瞬く間に床が崩壊した。


ガラガラガラ…ッ!!!


そのまま建物が崩落していき、僕らは4階の高さから真っ逆さまに!


「たすけてハル!!」


「無理無理!! わたしそんなに浮けない!!」


「嫌あああああ!!」


僕らは、内蔵が縮こまる思いをした。

このままじゃ、地面に激突する…!


そう思った次の瞬間、地面から巨大なツタが生えてきた。

そのツタは見事に僕たちをからめとり、ゆっくりと着地させる。


「へ?」


何が起きたのか理解できない。

目の前では、僕らを助けてくれたツタがうねうねと動いている。

そのツタの主は。


「ココちゃん!?」


「えへへ…」


彼女は照れながら笑う。


「ありがとう…助かったよ…」


「ココちゃん、なかなかやるわね!」


「えへ~…これでも私、用心棒ですから!」


「ひ~死ぬかと思ったぞ~」


「ハルは元から浮いてるじゃん!」


「…あ! そう言えばそうだったぞ!!」


バアン!!


僕らの会話を遮るように、魔物が拳を振り下ろしてきた。

戦いはまだ終わってない。


「みんな、話はまた後! 戦いの続きだよ!」


「マリンは離れた場所で魔法の準備をするのよ! 時間は私たちで稼ぐわ」


「うん、任された!」


「任せたわよ!」


そう言うとトーニャは、再び真剣な表情に戻る。


「おらあ゛あ゛!!」


トーニャが地面を強く蹴り上げた。

次の瞬間、大地から2本の石の拳が飛び出してくる!

トーニャは杖を振り回しながら、巧にその手を操り始めた。


ハルはそれをサポートする様に、珍妙な魔法を投げかけていく。

それはさっき見たような青白い手の攻撃や、良く分からない神々しいものまで様々だ。

正直、どこまで効果があるのか分からない物ばかりだけど。


しかしトーニャは、うまいこと利用していながら魔物と渡り合っていく。

なかなかの連携だけど、やっぱり決定打には至らない。

あの魔物が、異常なまでに頑丈すぎるんだ。


しかしある時。

トーニャの足元が揺らいだ。

それどころか、目の焦点があっていないような気がする。


ドゴンッ!!


そしてあっけなく、彼女の魔法が魔物に破壊されてしまった。


「トーニャ!!」


「…っ!」


彼女はなんとか立て直そうとするも、足元が覚束なかった。

魔力切れだ!

こんなに早く…!?


ハルはそれを察したのか、トーニャを抱えて逃げる選択をした。

しかし、魔物はなかなかの速さを誇る。

あっと言う間に、追いつかれてしまった。


その瞬間。


グワアッ!!


地面から伸びるツルが、魔物に絡みついた!

ココちゃんだ。

ずっと地面にへたり込んでいた彼女が、ここぞとばかりに勇気を振るう!


グルグルグルッ!!!


そのまま魔物を、何度も何度も地面に叩きつける。

魔物はたまらず、手で自らの身体を守った。

おかげで、トーニャがなんとか再起することができた!


「わっ…わた…わたしだって…出来るんです!!」


「…ふぅ…ふぅ…ありがと…ココちゃん…助かったわ…」


「えへへ…いいんですよ!」


ココちゃんは照れつつも、また杖を振るう。

今度は魔物に絡みつくツタを炎上させた!


燃え盛る炎!

瞬く間に包まれる魔物!


…けど、あんまり効果はないようだった。

石だもんね、あの魔物。

そのせいでツタが焼けてしまい、再び魔物は解放された。

今度は、ヤツはココちゃんに向かって駆け出してくる。


「ひ…ひぃ…お助けぇ…」


ココちゃんはどうしていいのか分からず、慌てて僕の影に隠れた。


でも大丈夫だ。

みんなが時間を作ってくれたおかげで、僕は魔法を放つ準備が出来た!

いつでも撃てる!


「みんな、ありがとう。 準備できたよ!」


その言葉を聞いて、みんなの顔が明るくなった!


「よし! いけマリン!!」


「うん! 今度こそ、決めてやる…!」


今度は外さない。

僕のありったけを、喰らいやがれ!!


ズパンッ!!!


僕は思いっきり魔法をぶち込んだ。

それは魔物の体の芯へと命中し、ヤツは中心からヘドロとなって形を失った。


カラ…カラン…。

地面に落ちる杖の音。


終わったんだ。


「みんな、お疲れ様……はぁ…」


戦いが終わったのだと思うと、突然力が抜けてしまった。

僕は地面にへたり込む。


「お疲れ皆! すごかったわ!」


「トーニャこそ…助かったよ」


「マリンこそ。 すごかったわよ!」


そこに、子犬のようにへこへこするココちゃん。


「ぇと…私だって…頑張りましたよ?…褒めてください!」


「偉かったわね! ココちゃん!」


「うん、ナイスだったよココちゃん!」


「えへへ…」


皆でココちゃんの勇気を褒めた。

それを見ていたハルが、私も褒めてほしいとばかリに前にでる!


「マリン! わたしも頑張ったぞ!」


「ハルも頑張ったね! 皆が居なかったら倒せなかった!」


「なんか…、面と向かって言われると恥ずかしいぞ!!」


僕らはお互いを褒めあった。

みんなが居たから、勝てたんだ!


その時だった。


ズドン!


突然、誰かが屋根から飛び降りてきた。

皆の視線が、一同に集まる。


深緑のかっちりした服を着た彼女は、こちらを鋭い眼光で睨みつけた。

身の丈程もありそうな武器を担ぎながら。

思わず、和気あいあいとした空気に緊張が走る

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る