42. 橋の町にて 2

橋の街を占領する魔物を倒すため、僕らは橋の町を探索していた。

メンバーは僕、ハル、トーニャの三人だ。

あまりに平和すぎて、観光してるみたいになっちゃってるんだけどね。


「すごいすごい!」


「ほらマリン、あんまり走り回らないのよ」


「えー! いいじゃん! トーニャのケチ!」


「っ!? 私ほど寛容な人は居ないわよ!」


「ごめんごめん」


「マリンはこういう街初めてなのか?」


ハルが飛び回りながら聞いてくる。


「うん!」


初めてみる発展した街並みに、僕は目を輝かせていた。

学び舎の島を都会だと思っていた僕が、まるで馬鹿みたい。

あんなの田舎だよ。

偽物の都会。


「こういう町を、都会って言うんだね」


僕はそんな言葉を呟いた。

すると、トーニャが笑いをこらえたような顔をする。


「…っぷ。 まだ…こんなの都会じゃ…ふふっ」


「マリンって田舎者だな!」


「えっ!?」


ド直球な言葉を漏らすハル。

僕はなんだか恥ずかしくなって、縮こまってしまった。


「むぅ!」


「ごめん…反応が面白くって…ぷっ」


そんな僕を、さらに笑うトーニャ。

なんだか僕は、段々と腹がたってきた!


「いいもんっ! どうせ僕は田舎で生まれて、田舎で死んでいくんですよーだ!」


「別にそこまでは言ってないわよ」


「いーもん! 僕許さないもん! ぷんぷん!」


「トーニャ…。 マリン怒らせちゃったな」


「みたいね。 謝るわ、マリン」


「ぷんぷんぷぷん!」


「飴あげるから元気出しなさいよ。 ね?」


トーニャは、僕を飴で釣ろうとした。

でも、そんな手には乗らないもんね!

僕はぷいっと顔を背けた。


「ぷいぷい!」


…視線を背けたその先に。


「ええ!?」


なんだかデカくてカッコいい石像が、大きな屋敷の屋根に鎮座していた。

それは悪魔のような巨体を、折りたたむように座っている。

僕は思わず、心を撃たれてしまった。


「あれ何!?」


「どれよ?」


「あれ! あの大きいお屋敷の上に立ってるあの石像!」


「わ…何よあの趣味の悪い彫刻…」


しかし、トーニャには響かなかったらしい。

辛辣な言葉を残す。

それは、ハルも同じだった。


「金持ちは変な奴らだな!!」


「そうね。 あれはさすがに悪趣味すぎるわよ」


「え…!? しゅみの…わるい…?」


2人して、あのカッコいい石像をけなしていく。

なんだかもう、僕泣きたい。


それでも僕は、あの石像を近くで見てみたい。

そう思いました。

なので、作戦があります。


「ね、トーニャ。 思わない?」


僕は、深みのありそうな言葉でトーニャに語りかける。

すると彼女は、気になった様子で耳を貸してくれる。


「何かしら?」


「あの石像、美術品みたいな雰囲気感じない?」


「そう? さすがに無理があるような…」


「トーニャってもしかして、芸術分からないタイプの人?」


「…!?」


彼女は僕の言葉に、ぎょっとしか顔をした。

そして、慌てて取り繕う。


「わ、わかるわよ? もちろんじゃない! 私は都会っ子だもの」


「それなら、あの像の良さも分かるよね!」


「…わ…分かるわ! あの像…心が綺麗な気がするわよ…!」


「さすがトーニャ、鋭いね!」


「でしょ? 田舎者には負けないのよ」


さりげなく痛い一言を残していくトーニャ。

それでも僕はへこたれない。


ひとまずこれで、僕の話術によってトーニャを洗脳した。

残るはあと一人。

なんとも洗脳しやすそうな幽霊だ。


「さてと…ハル!」


「な、なんだマリン!?」


「美的センス豊富なハルなら、もちろんあの像の素晴らしさがわかるよね?」


「当たり前だが!? あんなセンスの塊、わたしが見逃すはずがないぞ!!」


「そうだよね! ちなみに、どこにセンスを感じたの?」


「なんか…美味しそうな所!!」


おいしそうとは。


「特に足!! 脂乗ってて美味しそうだぞ!! お腹へってきた!!」


ぐ~。


本当にハルのお腹が鳴りはじめる。


「食べる!! わたしあいつ食うぞ!!」


あまりの返答に、もう僕はニコニコするしかない。

ともあれ僕は2人を説得する事に成功。

無事に悪魔の像を近くで見る権利を勝ち取った!


そして屋敷の前まで来たんだけど…。


「ありゃ。 この門、鍵掛かってるね」


屋敷の入り口には、厳重にカギがかかっていた。

門を登ろうとしても、上がなんだかトゲトゲしている。

これじゃあ、登りきる前に串刺しだ。


「んー。 困ったなぁ」


そんな悪戦苦闘している僕の前に、トーニャが出た。


「私に任せて。 こんなもの、ちょちょいのちょいよ!」


そう言うと彼女は、扉に杖を向けた!

クマちゃんが、可愛く揺れる。

ボクニマカセテ!

なんだか、そう言っているようだった。


次の瞬間。


ギギギギギッ!!!


捻じ曲がる門!


「何これ!? トーニャの魔法!?」


「そうよ。 別に珍しい物でもないわ。 ただの土属性よ」


「へぇ! こんなことが出来るんだ!」


学び舎では教えてくれない実戦的な使い方だ。

あくまで学び舎では、仕事や実生活に必要な魔法を学ぶ場所。

こんな乱暴で危険な使い方は、教えてはくれない。


「さ、入るわよ!」


「うん!」


「おー!!!」


それから屋敷の敷地に潜入。

そして、例の像の直ぐ近くまでやってきた。

屋根の上に居座るその像は、まるで僕らを見下ろしているかのようで、とっても壮大だ。

さっきまでは趣味が悪いだなんて言っていたハルも、その像に釘付けだった。


「見ろよマリン! でっかいどー!」


「でっかいね!」


「でっかいなぁ、マリン!!!」


「本当にでかいよ!」


「でっかぁ~~いな!!!」


「語彙力、旅に出てるのかしら?」


トーニャが僕らの会話を聞いて、ぼそっと呟く。

思わず、嫉妬しちゃう言葉選び。


「何そのセンス溢れる言葉選び!?」


「ふふふ、これが都会の女なのよ、マリン」


勝ち誇った顔のトーニャ。

しかしその横から、無垢な顔のハルが近づいてきた。


「トーニャ、小さい村出身じゃなかったか?」


「ハル!? なんでバラすのよ!?」


「嘘はダメだぞ!!!」


「もぅ! 違うのよ!」


ハルの言葉に、トーニャは必死に言い訳をする。

でも、もう遅い。

僕は悪い顔をしながら、トーニャをつつく。


「へぇ~…トーニャも田舎者だったんだ」


「うるさいわよ田舎者!」


「トーニャも田舎者じゃん!」


「田舎者田舎者田舎者!」


田舎者が田舎者に、田舎者と言う謎の現場。

別に、田舎も良い所だと思うけどなぁ。

僕の故郷も、すごく素敵な場所だし。


僕らはそうやって、バカ騒ぎをしていた。

しかしその時。


「まって」


トーニャが急に、真剣な表情になった。


「え?」


「どうしたんだ?」


「ちょっとだけ…静かにしててちょうだい」


そう言うと彼女は、じっと屋敷を見つめた。


「…気のせいかしら。 今、窓から人が見えた気がしたのだけど…」


「どこの窓?」


「そこよ」


「行こう。 誰か取り残されてるかもしれない」


「そうね。 行きましょう」


僕らは、急いで屋敷の中に駆け出した。


「おい! 私を置いていくなよぉ~」


ハルも遅れて付いてくる。

僕たちの事、気付かないくらい像に見とれてたらしい。

気に入ってくれたようでなによりだね。

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