第8話
足音を立てないよう、地面を慎重に踏みしめながら、俺たちは森の中の茂みや木々の陰に身を潜めて進む。
日差しが木の隙間から射し込み、森の中に斑点のような光を作り出しているが、その明るさすら今の状況では敵の視線を引きつけかねない。
俺たちはその光を避けるように進み、静かに距離を縮めていく。
ゴブリンたちの動きが少しずつ見えてきた。数匹が少し離れているが、その集団はまだ密集しており、こちらの接近には気づいていない様子だ。息を殺し、目を細めてその様子を見守る。
「ここで良いだろう」俺はそう言って止まった。
目の前の茂みの後ろに身を潜めながら、俺は周囲の様子を確認する。少しだけ風が吹いて木々が揺れ、葉音がかすかに耳に届く。
その音が逆に周囲の静けさを強調しているようだ。ゴブリンたちは相変わらず無警戒に歩き回っており、うまく位置を取れば奇襲のチャンスだ。
「みんな、いけるな?」
俺が低い声で確認すると、全員が静かに頷く。その表情には決意が感じられる。
「配置は、前衛が俺とグロリア、ヴァネッサ、セシリア、フレイヤ、ウェンディ、後衛がアグネスとアメリアで頼む」
その言葉に、全員が即座に頷く。
その顔に迷いはなく、皆の意識が一つにまとまるのが感じられた。
静かな緊張感が漂う中、アグネスが一歩前に出て、力強く頷いた。
「ん、最初は私に任せて」
アグネスが前に出て、矢を手にする。弓矢を使う彼女は、少し遠距離から攻撃するタイプだ。グロリアとヴァネッサもそれぞれ剣を構え、他の仲間たちも戦闘準備を整え始める。
「いく!みんな、動きはシンプルに、全力で!」
俺が指示を出すと、全員が素早く動き出す。ゴブリンの群れに向かって一斉に向かうが、敵の数が多いため、慎重に行動する必要がある。
最初にアグネスが矢を放ち、ゴブリンの一体を射抜く。
その勢いで、アグネスは矢を次々と放ち、目の前に現れたゴブリンを数体、的確に仕留めていった。彼女の腕前は確かで、まるで弓矢がゴブリンの急所を見逃すことなく突き刺さる。
ゴブリンたちは最初、何も気づかずにいたが、しばらくすると仲間が倒れる音に反応し、一斉にこちらに向かって突進してきた。
「来たか!俺たちも行こう!」
俺は一歩踏み出し、グロリア、ヴァネッサ、そして他の仲間たちと共にゴブリンに立ち向かう。スライムとは違い、こいつらは知性がある。気を抜くわけにはいかない。
「うおおおお!」
全員が武器を構え、茂みを抜けて広場へと踏み込む。その瞬間、ゴブリンたちが一斉にこちらに向かって突進してきた。
「グギャァァァッ!」
その不気味な叫び声とともに、無数のゴブリンたちが俺たちに襲いかかってきた。その数、まさに圧倒的だ。戦闘が始まる前から、心臓が早鐘のように打ち始める。
「…1 …2 …3 …5 …8 …10 …13 …15 …19 …24、28匹!多すぎる!」
ヴァネッサが冷静に数を数えて報告する。
昼下がりの太陽が高く昇り、空は澄み渡っている。しかし、森の中は日差しが木々の間からこぼれ落ち、薄暗く湿った空気が漂っていた。
足元には日差しを受けて輝く落ち葉が散らばり、地面から立ち上るわずかな湿気が涼しさを感じさせる。
「予想以上だな」
「マスター、こいつら弱いけど、数が多すぎて厄介よ!」
セシリアの声が響く。彼女の眼差しも鋭く、周囲を警戒している。
その言葉通り、目の前に広がるゴブリンたちの数は圧倒的だ。太陽の光が木の間から差し込んでいるものの、彼らの影に隠れるようにして進んでくるゴブリンたちは、不気味に低い声を上げながらじりじりと距離を縮めてきている。
「囲まれる前に、1、2匹ずつ確実に倒すぞ!みんな、行くぞ!」
俺が指示を出すと、全員が即座に反応した。剣を握りしめ、戦闘態勢に入る。昼の光が反射する金属の剣が煌めき、鋭い息づかいが静かに響く。
「はい!」
「了解です!」
一気に突進した。足音が地面を蹴り上げる音と共に、俺の目の前に現れたゴブリンの首を、素早く一閃で切り落とす。
光が弾け、首が空を舞う。
そのまま次のゴブリンの斬撃をかわし、胸部を切り裂く。昼の明るさの中で、飛び散る血しぶきが太陽の光を反射し、紅い雫が空中で煌めく。
周囲に散らばったゴブリンたちはすぐに反応し、怒声を上げて攻撃を繰り返してくる。だが、俺たちの動きは速い。昼の明るさの中でも目が慣れ、視界は広く、相手の動きがはっきりと見える。数に押されることなく、俺たちは次々とゴブリンを倒していく。
一気に突進し、俺の目の前に現れたゴブリンの首を、素早く一閃で切り落とす。
そのまま次のゴブリンの斬撃をかわし、胸部を切り裂く。
血しぶきが周りに飛び散る。
「グギィィィ!!」
ゴブリンの悲鳴と共に次々と倒れていく。
その合間に、俺は素早く周りの状況を確認する。
ヴァネッサ、フレイヤ、ウェンディ、セシリアがそれぞれの敵に対応している。
彼女たちの動きも、どんどん鋭くなってきている。
「マスター!後ろ!」
アメリアの声が聞こえ、振り返ると、後ろからゴブリンアーチャーが矢を放つ。
その瞬間、何故か矢がスローモーションのように感じられた。
「これは…《見切り》の影響か?」
視覚が鋭敏になったおかげで、ゴブリンの動きが遅く感じる。
矢を軽々と避け、一瞬でゴブリンに接近、剣を一閃。
「ガシュッ!」
剣がゴブリンの喉を貫き、血飛沫が舞い上がった。
「残り20匹!みんな、気をつけろ!」
俺が叫ぶと、ゴブリンたちはさらに凶暴になったように見える。だが、逆にその攻撃を食い止めるのが俺の仕事だ。
「グギャァァ!」
突然、周囲のゴブリンたちが同時に突進してきた。体格が小さいとはいえ、数で圧倒してくる。俺は冷静にその動きを見極める。数が多いとはいえ、俺一人でも何とかなりそうだ。
「みんな、俺に任せろ!」
俺が叫ぶと、全員、一瞬戸惑ったが、すぐにそれぞれが自分の位置を取る。俺は足元をしっかり固め、無駄のない動きでゴブリンたちの間を縫っていく。
「まずは1匹ずつ確実に潰す!ターゲットはお前だ!」
目の前のゴブリンに向かって素早く踏み込む。相手は素早く槍を振るってきたが、俺はその動きを完全に予測し、すかさず身体を低くして回避。
槍の一撃は空を切り、俺はその隙間に滑り込む。
「グギッ!」
ゴブリンは反応が遅れた瞬間、俺の剣がその胴体に深く突き刺さる。
そのまま引き抜くと、ゴブリンは息絶えた。
「1匹目、終わり!」
そのまま俺は次々とゴブリンたちを相手にしていく。俺の剣が振るたびにゴブリンの体が切り裂かれ、血が飛び散る。ひとたび戦闘が始まると、俺はただの力任せの戦い方ではなく、相手の攻撃を避けつつ、最適な瞬間に反撃を加える。
「次はお前だ!」
振りかぶった槍が俺に迫る。だが、俺は一歩前に踏み込んでその攻撃を避けると、ゴブリンの喉元を狙い、一閃。槍を持つ手が弾け、ゴブリンは絶命した。
「ガシュッ!」
そのまま攻撃を止めることなく、俺は次のゴブリンに目を向ける。俺の周りでは、ヴァネッサ、フレイヤ、ウェンディがそれぞれの敵を相手にしているが、俺はその間隙を縫って一番危険なゴブリンを迅速に倒していく。
「グギャァァッ!」
後ろからゴブリンが飛びかかってくる。だが、俺はその動きも予測できていた。すぐに後ろに飛び退くと、ゴブリンは空振り。俺は地面を蹴ってそのままゴブリンに突進し、膝蹴りでその胸部を打ち抜く。
「グギィィィ!」
ゴブリンが崩れ落ちると同時に俺はさらに前進して、次のターゲットへと向かう。
そのすぐ後ろで、アメリアが弓矢で遠距離から援護してくれる。
「ありがとう、アメリア!」
「はい、援護します!」
彼女の矢は俺の指示を待たず、ゴブリンたちを確実に射抜いていく。
俺はその隙に、複数のゴブリンを相手にしていた。
「残り11匹!」
俺はアメリアの声を聞いて、さらにスピードを上げる。
振り返りざまに、一匹のゴブリンが振りかぶった槍を投げてきた。
それを見逃すことなく、俺は素早く手を伸ばし、槍をキャッチ。
そして、そのまま、力を込めてそのままゴブリンの方へ投げ返す。
「グギャァ!」
槍はゴブリンの胸を正確に貫き、ゴブリンは悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。
「次はお前だ!」
今度は少し離れた場所で、ゴブリンアーチャーが俺を狙っている。
その矢は非常に速く、避けるのが難しい。
しかし、俺は冷静にその矢の軌道を読み取り、わずかに身体を左に傾けて避ける。
「くっ…!」
ゴブリンアーチャーが再度弓を引く。
だが、俺はもうその隙を許さない。剣を一閃、そのまま弓矢を飛ばす手のひらを切り裂き、ゴブリンアーチャーはその場でうずくまった。
「よし!残り7体!」
「マスター、ゴブリンの様子がおかしいです」
「逃げる気みたいです」
残りのゴブリンたちは、一瞬のうちにその場から離れようと動き出した。
恐怖に駆られたように、群れが一斉に後退し、逃げ道を探し始める。
彼らの目には明らかな焦りと戸惑いが浮かんでおり、もはや戦意を失っているようだった。
「逃がすかよ!グロリア!フレイヤ!ヴァネッサ!」
「「はい!」」
「わかった!」
俺は全速力でゴブリンたちに突進する。
足音が響き渡り、俺の剣が次々とゴブリンの首元を貫いていく。
瞬く間に、4匹のゴブリンをその場で倒しきった。
「グギャァァァァァ!!」
残りのゴブリンたちは必死に森の中へと逃げようとするが、先回りしたグロリアたちによって次々と倒されていく。
「これで最後です!!」
「ギャアァー!!」
最後の一匹が悲鳴を上げながら地面に倒れ込むと、静寂が一瞬訪れた。
辺りには倒れたゴブリンたちの死体が無惨に散乱しており、その血で赤く染まった大地が、戦いの終わりを告げていた。
「ふぅ...片付いたか...。みんな、強くなったな」
「マスターのおかげです」
グロリアが恥ずかしそうに微笑みながら答える。
「いや、みんなの努力だよ。これからも頑張ろう」
その言葉に、みんなが少し照れくさそうに微笑む。
だが、その後に続く不穏な音が、すぐに俺たちの注意を引いた。
「グギャァァァァァ!!」
その叫び声は、クリフォートの根元にある洞窟から響き渡り、耳をつんざくような恐怖の叫びが空気を震わせた。
その瞬間、何かが上空から急速に迫ってくる音が聞こえた。
鋭く風を切るような音――それは何かが一気に降下してくるような音だった。
全員が一斉に顔を上げ、身構えた。空気を切り裂く音に、思わず呼吸が止まった。
※ 初心者です。誤字報告やアドバイスお待ちしてます。
※ 近況ノートに大陸地図と気候区分を添付してます。
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