採鹹編
後異世界の塩事情◆前編
ある日うっかり「
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「
より塩分濃度の高い水、
なお、「
1.硫酸カルシウム(CaSO4。析出量第2位。石膏の主成分。いったん結晶化すると水に溶けにくいため、析出すると
↓
2.塩化ナトリウム(Nacl。析出量第1位。これこそまさに本命の塩! 塩分濃度3.5パーセント程度の海水基準で言うと、塩化ナトリウム濃度は2.73パーセントなので、100度なら元の海水のだいたい一割程度の量になったところで飽和水溶液(塩化ナトリウム濃度28.05パーセント)となり、析出が始まる(沸点上昇のため、実際の沸点は110度程度)。)
↓
3.塩化マグネシウム(MgCl2。析出量第3位。
↓
4.硫酸マグネシウム(MgSO4。析出量第4位。
↓
5.塩化カリウム(KCl。析出量第5位。
1.
2.煮詰めすぎず、ほどほどで切り上げて
3.塩の結晶にこびりついてしまった石膏分や
飽和食塩水は、水に限界まで食塩を溶かしきった食塩水のことで、当然のことながらこれに塩化ナトリウムの結晶を浸けたとしても、結晶が溶けてしまうことはありません。
では本題の「
要はいかにして人は海水を
合言葉は「目指せ十倍!(今決めた)」。
塩化ナトリウム濃度が2.73パーセントの海水を、
◆直煮法(じきにほう)
オススメ度★☆☆☆☆
海水の汲み上げ:人力
海水の散布:-
最も基本的な水分除去法。
現在市販されている物で言えば、「薪窯直煮製法のだ塩(岩手県九戸郡野田村大字野田)」などが有名。
◆藻塩焼き
オススメ度★☆☆☆☆
海水の汲み上げ:人力
海水の散布:人力
現在市販されている物も、実態を明らかにする文献が見つかっていない以上、「藻塩」と名のつく物はとりあえず製塩の段階のどこかで海藻を使ったか、成分に海藻由来のものが含まれるというアピールに過ぎない。
◆塩田法
海水から水分を除去することで製塩しようとする方法。
海から汲み上げた海水を「粘土で漏水防止加工済の砂地(=塩田)」にぶちまけて太陽熱で水分だけを蒸発させ、塩が吹いた砂ごと海水入りの容器にぶち込むことで塩分濃度を上げていく、というのが基本のルーティーン。太陽熱頼みのため、冬場の生産は絶望的。海水の質が塩の質に直結してしまう点や、周囲の環境が場合によっては塩の質に結びついてしまうことがある点(例えば花粉のような空気中の浮遊物が塩田に降り注いだりしないのかという意味で)は要注意。異世界に持ち込む場合にはさらに、「塩田」という拓けた場所の安全性を確保できるのかという点でもかなり不安が残る。
◇揚げ浜式塩田法
オススメ度★★★☆☆
海水の汲み上げ:人力
海水の散布:人力
製法が明らかになっているうちでは最も基本的な水分除去法。マン・パワーに物を言わせてすべてを解決しようとするので汎用性は高い。ただし太陽熱頼みのため、冬場の生産は絶望的。海水の質が塩の質に直結してしまう点や、周囲の環境が場合によっては塩の質に結びついてしまうことがある点(例えば花粉のような空気中の浮遊物が塩田に降り注いだりしないのかという意味で)は要注意。平安時代の終わりから。昭和46年の塩業近代化臨時措置法成立により途絶えそうになるが、現在も生産は続いている。
海から汲み上げた海水を「塩田」に撒き、塩が吹いた砂ごと、海水入りの専用の枡に入れていく。上澄みは
現在市販されている物で言えば、「奥能登揚げ浜塩(石川県珠洲市清水町)」「
◇入浜式塩田法
オススメ度★★☆☆☆
海水の汲み上げ:海の干満パワー
海水の散布:「毛細管現象」頼み
特殊な条件下でのみ真価を発揮した水分除去法。遠浅で干満差が激しいところという条件を満たした場所でのみ展開された、チート的塩田法。ただし太陽熱頼みのため、冬場の生産は絶望的。海水の質が塩の質に直結してしまう点や、周囲の環境が場合によっては塩の質に結びついてしまうことがある点(例えば花粉のような空気中の浮遊物が塩田に降り注いだりしないのかという意味で)は要注意。早いところでは室町時代くらいから。
満潮時に「塩田」に海水を引き入れ、干潮時には閉ざして抜け出ないようにしたことで、とりあえず海水を汲み上げたり、それを撒いたりする作業はなくなった。海水が滲み込んで塩を吹いた砂ごと、海水入りの専用の枡に入れる以降の部分はマン・パワーで解決するしかなかった。それでも揚げ浜式に比べると、数分の一の労力で済んだらしい。
現在市販されている物で言えば、「宇多津 入浜式の塩(香川県綾歌郡宇多津町)」、伊勢神宮の神事などが有名。
◇流下式枝条架併用塩田法
オススメ度★★★☆☆
海水の汲み上げ:ポンプ
海水の散布:ポンプ
一気に電化が進んだ水分除去法。天日塩製法を研究した
ポンプで汲み上げられた海水は真っ先に「流下盤」に流され、太陽熱によって水分を蒸発させながら次のポンプにたどり着く「流下式」という洗礼を受けた。立体的な「枝条架」に滴らせることで、太陽熱に風の力までプラスされてより水分蒸発力が高まったとはいえ、「流下盤」を使わずに直接「枝条架」に海水を吹きかけただけでは、「枝条架」を繰り返したところでなかなか塩分濃度は上がらないらしい。「流下式」を繰り返すことで作り出された
枝条架にこびりつき、乾燥の邪魔となる硫酸カルシウム(石膏)の除去にかなり頭を痛ませたらしいが(
現在市販されている物で言えば、「一番釜 のと珠洲塩(石川県珠洲市長橋町)」「海の精(東京都大島町。要は伊豆大島)」「奥能登珠洲塩(石川県珠洲市清水町)」「されど塩(愛媛県今治市)」「珠洲(すず)の塩(石川県珠洲市長橋町)」などが有名。
◆イオン交換膜製塩法
オススメ度★★★★★
海水の汲み上げ:電力
海水の散布:電力
最大の特徴は、イオン膜の穴の大きさにある。
陽イオン交換膜の穴をナトリウムイオン(イオン半径0.97Å)に、陰イオン交換膜の穴を塩化物イオン(イオン半径1.8Å)にそれぞれ合わせてやることで、大本命達はどんどん
たとえば「イオン交換膜で採った
つまり、「海水を流すだけで自動的に石膏や
食用に適さない石膏はさておき、
そもそも「最初から比率的に極々微妙にしか含まれていないと分かっている(ナトリウム&塩素以外の)ミネラルをわざわざ塩からに限定して摂ろうとする必要があるのか」「塩から摂ろうとして摂れるものなのか(含まれている=摂れるなのか)」という問題もある。代替品の存在しない塩の使命はあくまでも「ナトリウム(と塩素)というミネラルの摂取」、味で言えば「塩辛さ」であると割り切ってしまっても良いように思う。塩を塩だけで摂ることはまずない以上、調理済みの料理にナトリウム&塩素以外のミネラルが含まれていたとしても、それが何由来のものなのかは分からないからである。
塩が結晶化している以上、「塩に含まれているミネラル」として表示されているものは勿論、塩の中にイオンのまま、もしくは成分のままで存在しているとは考えにくい。基本的に化合物であり、水に溶けない場合さえある。「天然塩」等に含まれているとされるカルシウムを例に挙げれば、さながら骨粉でも添加するかごとく「カルシウムそのもの」が含まれている訳ではなく、その大半は人体では活用できない炭酸カルシウムや硫酸カルシウム(石膏)の状態で含まれている。そうなるとどんなに頑張っても、塩からカルシウムを摂ることはできない。万に一つの可能性で言えば、塩化カルシウムとなっている場合のみ、人体に取り込むことができる。成分として表示されているから必ず摂取できるという保証はどこにもない。
人間の舌の味蕾はあくまでもセンサーであって、実際に味わっているのは脳であるとされている。そういう意味では「付加価値やストーリーがある(分かる)食品の方が美味しく感じる」という可能性は捨てきれない。また塩の結晶の粒の大きさやその揃い具合、塩の水分の含み具合などが味覚に影響を与えたという可能性もまた捨てきれない。
ただ、塩にはっきりと等級があった江戸時代。真水ならぬ「真塩」が最高のものとされ、「(苦汁をしっかりと切った)すっきりとした味の塩」「(苦くない)甘い塩」という評価を得ていた。それに対するのが、故意に
いずれにせよ「製塩に必要最低限の要素だけを抜き取るシステムのお陰で、海水の状態を問わず季節を問わず、常に一定の質と量を確保できる」という「イオン交換膜製塩法」は、製塩技術が未発達であったり、国内の需要を賄いきれなかったりしていた場合、大きな武器になることは間違いない。仮に海は海としてあるとしても、海水自体がどのような状態にあるのかは分からない異世界でも確実に製塩したい場合には、かなり心強い製塩法になると言えるだろう。
現在市販されている物の主流として有名。
◆空中結晶製塩法
オススメ度★★☆☆☆
海水の汲み上げ:電力
海水の散布:電力
権威や自然を前面に押し出した薀蓄系水分除去法。製塩の華であったはずの「
「
そもそも飲酒ならぬ「飲海水」が特段奨励されていない現状を鑑みれば、「海水中の全ミネラルを比率通りに摂取しようとすることに意味はあるのか」「仮にそれらが塩に含まれていたとして、結晶化した時点で化合物化してしまっている場合がほとんどである以上、『海水の成分構成そのままに結晶化した自然塩』などと吹聴できるのか」といった問題は当然、生じてくる。しかも、今までの製塩で廃棄されてきた
さらに注意すべきは、特許やギネスといった権威的存在、さらには海水を取り巻く環境だの製塩法だのを含めたストーリーがこれでもかと用意された、いかにも脳に味わわせるための「薀蓄系」の塩であるということである。さらには「塩(=ナトリウム&塩素)もまたミネラルである」という事実には目を瞑り、あくまでも「塩とミネラルは別物である」というスタンスで「(精製塩には)肝心のミネラルが入っていない」だの「(
いずれにせよ「海水中の全ミネラルを結晶化」してしまう方法では、仮に海は海としてあるとしても、海水自体がどのような状態にあるのかは分からない異世界では、「完全に安全と言えるよう処理済の
現在市販されている物は数種類あるようである。
異世界で海塩を求めれば、必ずぶち当たるであろう
その壁をいかにもその世界らしい方法、その世界の
今回、
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イオン半径のÅ(オングストローム)は、
100億分の1メートルであり、
1億分の1センチメートルであり、
1000万分の1ミリメートルであり、
1万分の1マイクロメートルであり、
10分の1ナノメートルであり、
100ピコメートルであり、
10万フェムトメートルであり、
10万ユカワである。
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