異世界の塩事情◆岩塩余話

 海水を用いた製塩技術が成熟しきった感のある「現代」では「海塩の半値程度で取引される手軽なナトリウムの結晶」という印象の岩塩ですが、果たしてどういったところでどのように採掘されているのか、異世界物でさらりと登場させられるようになるためにも、おさらいしておきたいと思います。併記した他言語は、検索の際にお役に立ちましたら幸いです。

 ちなみにこの文章中での等級分けは、今回便宜上つけた仮分類であって、実際にそう分類されているわけではありませんのでご注意ください。



◆初級編

 岩塩を採掘している場所と聞いた誰もが想像しやすい、テンプレ的岩塩坑。ゲーム世界に於けるいわゆる「地下迷宮ダンジョン」を連想させるような存在であり、少ない描写でもストレスなく物語に馴染むものと思われる。ただし「太古は海だった場所である」という前提や「地殻変動の結果、山地や山岳になっている」という可能性が生じてしまう点、さらには大規模な岩塩床がある以上は必ず「地盤が極度に安定した場所である」という制約を受けてしまう点には注意が必要である。


 要は「太古の海の生物の化石やそれに准ずる何かが出土しますよ」「地中を荒らすような魔物は最初から存在し得ないエリアだという宣言になっちゃいますよ、最近棲みついて大騒ぎとかいうなら別ですが」という話である。



◇ヴィエリチカ岩塩坑【Kopalniaコパルニア soliソリ Wieliczkaヴィエリチカ】&ボフニャ岩塩坑【Kopalniaコパルニア soliソリ Bochniボフニャ】&クウォダヴァ岩塩坑【Kopalniaコパルニア soliソリ Klodawaクウォダヴァ

 落合直文おちあいなおぶみ作詞の明治軍歌『波蘭ポーランド懐古かいこ』でも知られる中欧ポーランド共和国の、複数ある岩塩坑。数あるうちで最も高名なのが世界最古のユネスコ世界遺産であり、世界第一位の岩塩鉱山でもある「ヴィエリチカ岩塩坑(深さ327メートル、全長300キロメートル、九層からなる地下採掘場)」である。一九九六年以降は商業採掘こそ行われていないものの、ポーランド屈指の観光名所の一つとなっており、一部(深さ135メートル、全長3.5キロメートル、3層まで)が一般に公開されている。また塩の殺菌効果を利用した、呼吸器疾患治療のための地下保養所(いわゆる塩洞窟サナトリウム的なもの)などもあるらしい。坑内の安全を祈願して作られたという総岩塩造りの礼拝堂(聖キンガ礼拝堂が特に名高い)や岩塩像、レリーフ、シャンデリアなどで知られる。

 岩塩の輸出による利益は、当時のポーランド王国財政の三分の一を占めたと言われ、王国の黄金期を支えた。



◇ケウラ岩塩坑【英語名:Khewraケウラ saltソルト mineマイン

 南アジアにあるパキスタン・イスラム共和国のケウラ塩山にある岩塩坑。世界第二位の大きさを誇る。第一位のヴィエリチカ|(ポーランド)が総岩塩造りの教会なら、ケウラは塩レンガで造られたモスクや郵便局があることで有名。



◇シパキラ岩塩坑【Minaミナ de salサル de Zipaquiráシパキラ

 南米コロンビア共和国クンディナマルカ県シパキラ市にある岩塩坑。岩塩坑がそのまま教会に流用されており、複数の地下礼拝堂や岩塩製の十字架などがある。『チリ33人 希望の軌跡』(アントニオ・バンデラス主演。チリ・サンホセ鉱山落盤事故の救出劇の映画化。原題『The 33』)」の撮影にも使われた。




◆中級編

 岩塩を採掘している場所と聞いて想像されるイメージとはやや趣を異にすると言える岩塩坑。「溶解採鉱法を駆使した煎熬せんごう塩」であったり、岩塩とは名ばかりの「地下塩泉由来の煎熬せんごう塩」であったりするなど、固形塩ではない場合も多い。多少の描写がないと読者が飲み込みにくかったり、物語に馴染みにくかったりする可能性があるものと思われる。ただし「太古は海だった場所である」という前提や「地殻変動の結果、山地や山岳になっている」という可能性が生じてしまう点、さらには「ある程度の地盤の安定の保障」という制約を受けてしまう点には注意が必要である。


 要は「太古の海の生物の化石やそれに准ずる何かが出土する可能性がありますよ」「溶解採鉱法を活用する場合には地中を荒らすような魔物は最初から存在し得ないエリアだという宣言になっちゃいますが、地下塩泉を活用する場合には地中を荒らすような魔物が棲みついていても問題ないかもしれません」という話である。



◇リューネブルク【Lüneburg】

 中欧ドイツ連邦共和国ニーダーザクセン州リューネブルク郡リューネブルク市にある、ハンザ同盟内で唯一の塩の生産地。リューネブルク産の煎熬せんごう塩はすべて「ハンザ同盟の盟主・ハンザ都市リューベック」へと運び込まれたという。岩塩&海水塩の精製がままならなかった十二世紀にあって、「白いダイヤモンド」と呼ばれるほど極端に純度の高い煎熬せんごう塩を生産したことで、地中海産の安価な海水塩が大量に出回るようになるまでは、塩の力でハンザ同盟の繁栄を下支えした。

 巨大な岩塩層と、それを溶かす地下水層とが同時に街の地下にあったことで「高濃度の天然鹹水かんすいという地下資源を労せず手にできた特別な場所」。それが塩の街・リューネブルクであった。リューネブルクには塩専用の倉庫が建ち並び、そのほとんどが塩漬けニシンの材料として、日本で言うところの「塩の道」、すなわち「塩街道」【Alteアルテ Salzstraße・ザルツシュトラーセ】を通じてハンザ都市リューベックへと運び込まれた。塩の運搬量を増やすため、遂にはヨーロッパでは初の「山越え運河」(=二つの川の谷を結ぶ人工的な水路)となるシュテックニッツ運河――世界初は秦の始皇帝が築いた霊渠れいきょ――までが造られることとなった。

 ちなみに「ハンザ」とは「現代ドイツ語」で言うところの「ハンゼ(Hanse。商人組合・団体)」を意味し、異世界物では大定番中の大定番とも言える組織、「ギルド(職業別組合)」と意味としては近い単語である。ハンザ同盟が築いた一時代、誇った栄華というものが、「ギルドは儲かる、採算が取れる」「(それがどういった種類のものであれ)ギルドは社会に於いて機能し得る」というイメージの根底にあるのかもしれない。



◇バート・ライヒェンハルの旧製塩所【Alteアルテ Saline・サリーネ inイン Badバート Reichen・ライヒェンhallハル

 中欧ドイツ連邦共和国バイエルン自由州ベルヒテスガーデナー・ラント郡バート・ライヒェンハルにある、岩塩&煎熬せんごう塩(=アルペンザルツ)の一大産地。地下にある岩塩帯を直接採掘していただけでなく、岩塩が溶け込んだ地下塩水も鹹水かんすいとして活用していた。「旧製塩所アルテ・サリーネ」にはポンプ室があり、鹹水かんすいの汲み上げには巨大水車(直径13メートル)が用いられていた。

 バート・ライヒェンハルと塩との関係は、石器時代、ザーラッハ川【Die Saalach】(ザールアッハ川とも)の川岸が動物達の塩舐め場であったことにさかのぼる。発見された岩塩は、発掘が始まったとされる紀元前から現在に至るまで、交易に於いては金銭の代わりを果たすほど貴重なものとして、バイエルン自由州内の都市の歴史のすべてに大きく関わり、それらの発展を支えた。守護聖人も「塩への貢献度を基準に選んだ」としか言い様のない、製塩業そのものや塩の交易に大きく寄与したとして知られる聖ルパートである。

 バート(=泉)・ライヒェン(=豊かな)ハル(=塩)は「豊かな塩泉」を意味しており、「塩の温泉リゾート」としても有名である。巨大水車による地下塩水の汲み上げは現在でも行われているが、高塩濃度温泉や温泉プールは元より、吸引療法インハレーション用の「(塩水の)屋外吸入治療装置」【Gradierグラディアwerkヴェルク】に活用されるなど、専ら街内のリゾート施設で使われているようである。



◇バート・デュルンベルク岩塩坑【Salzweltenザルツヴェルテン Badバート Dürrnberg・デュルンベルク

 中欧オーストリア共和国ザルツブルク州ハライン郡バート・デュルンベルクにある、ザルツブルク司教領(696年~798年)並びにザルツブルク大司教領(798年~1803年2月11日)並びにハプスブルク家の繁栄を支えた岩塩坑。「司教領/大司教領」はとても乱暴に言うならば「司教国/大司教国」とも言い換えられる存在であり、要はローマ=カトリック教会あるいはハプスブルク家の収入源の一つであったと言える。ちなみに最終的なオーストリア併合は1816年のことなので、オーストリアの繁栄を支えたとまでは言い難い。坑内にはドイツとオーストリアの国境がある。作業員が坑道を降りる際に使っていたという滑り台や、坑内にある地底塩湖や、作業員が坑道を降りる際に使っていたという滑り台は、現在は観光資源としても活用されている。また、産出された岩塩はザルツブルク州第二の都市でもある郡都ハライン【Hallein】で製塩され、「ザルツブルクの塩」としてザルツァッハ川【Die Salzach】(ザルツァハ川とも)の水運でヨーロッパ各地に輸出された。ちなみに「ザルツブルク」はドイツ語で「塩の城砦」を意味する(標準発音なら「ザルツブルグ」、現地発音では「サルツブルク」になる模様)。また「ハライン」については、ケルト語で「塩のホール」を意味しているとする説がある。



◇ハルシュタット岩塩坑【Salzweltenザルツヴェルテン Hallstattハルシュタット

 中欧オーストリア共和国オーバー・エースターライヒ州グムンデン郡ハルシュタット町にある、世界最古の岩塩坑。ザルツカンマーグート地方(オーバー・エスターライヒ州西南部&ザルツブルク州北東部)とも呼ばれている。先史時代から現在に至るまで採掘が行われ続けている。作業員が坑道を降りる際に使っていたという滑り台は、現在は観光資源としても活用されている。かつては「白い黄金」とさえ称された塩の力に拠るものか、紀元前1200年頃から紀元前500年頃には青銅器や鉄器を使用した高度な文化、「ハルシュタット文化」が栄えた。

 「ハル(=塩の)シュタット(=都市)」は「塩の街」を意味し、「ザルツ(=塩の)カンマーグート(=御料地)」の名は、ハプスブルク君主国の直轄地として手厚く保護を受けたことに由来する。



◇ネモコン岩塩坑【Minaミナ de salサル de Nemocónネモコン

 南米コロンビア共和国クンディナマルカ県ネモコン村にある岩塩坑。天井から地下塩水が滴り落ち続けることできた塩柱や塩の滝、総重量1.6トン程度の塩の結晶でできたハート型のモニュメントなどが有名。塩製のマリア像やキリスト像などもある。塩坑のあるとあらゆる場所で地下塩水が滲み出し続け、結晶化し続けることで、坑壁は塩に覆われ、さながら総塩造りの鍾乳洞のようになっている。『チリ33人 希望の軌跡』(アントニオ・バンデラス主演。チリ・サンホセ鉱山落盤事故の救出劇の映画化。原題『The 33』)」の撮影にも使われた。




◆上級編

 岩塩を採掘している場所と聞いて想像されるイメージとはかなり趣を異にした岩塩坑。思いもかけない場所で採掘していたり、廃塩坑が積極的に活用されていたりと、馴染みがなければ驚くこと間違いなし。基本的な前提や制約は初級編とさほど変わらないが、塩坑の場合は持っているパワーや利点さえ押さえておけば、既にその基本的な役目を終えている分、どう活用しようと自由、ということになる。ゲーム世界に於けるいわゆる「地下迷宮ダンジョン」を連想させることも勿論可能。何でもあり。


 要は「人間が大事に活用してもいいし、本物のダンジョン化させてもいいし、採りこぼした塩目当てで魔物が住み着いてもいいし、何でもあり」という話である。



◇タガザ岩塩鉱山【英語名:Taghazaタガーザ saltソルト mineマイン】(テガーザ岩塩鉱山【英語名:Teghazaテガーザ saltソルト mineマイン】とも)&タウデニ岩塩鉱山【英語名:Taoudenniタウデニ saltソルト mineマイン

 サハラ砂漠にある塩鉱(ただしタガザ(テガーザ)は十七世紀初頭には枯渇)。どちらも太古の塩湖が干上がって岩塩層となったもの。砂漠であっても塩は採れるという実例。イブン・バットゥータの『三大陸周遊記(旅行記とも)』にも取り上げられている。ガオ王国【Gao Empire】やマリ帝国【Mali Empire】、ソンガイ帝国【Songhay Empire】などの繁栄を支えた。サハラ地域にとっての岩塩はまさしく「白い黄金」であり、近代化によって出回るようになったという海塩の方がむしろ安物のようである。

 砂漠の孤島という環境の過酷さ故に、タウデニ盆地にあるタウデニ塩鉱には「岩塩の採掘を目的とした政治犯用の刑務所」が作られた時代もあった。板状に切り出された岩塩は、ラクダのキャラバン(=アザライ)によって命がけで運ばれる。



◇ソロトヴィーノ岩塩坑【英語名:Solotvynoソロトヴィーノ saltソルト mineマイン

 東欧ウクライナ最西部ザカルパッチャ州の、メディア王ロバート・マクスウェルの出身地としても知られるソロトヴィーノ村【Солотвино/Solotvynoソロトヴィーノ】近くにある岩塩坑跡。このうち第9坑道が塩洞窟療法(いわゆるハロセラピー、スペレオセラピー)を行なう塩洞窟サナトリウムとして再利用されているとのこと。アレルギーや喘息、気管支炎、皮膚病などの治療に効果があるとされる。


 Kirill Kuletski氏(≒キリル・クレツキ氏)の写真集『Speleoスペレオtherapyセラピー』(洞窟療法、2009年)にて紹介されているのがこちら。



◇サリィエダール岩塩坑【英語名:Soledarソレダル saltソルト mineマイン

 東欧ウクライナ東部ドネツィク州のサリィエダール【Соледáр/Soledarソレダル】という町にある岩塩坑。その一部が「The Cavingケイヴィング holidayホリデイ centerセンター "Saltソルト Symphonyシンフォニー"」という塩洞窟療法(いわゆるハロセラピー、スペレオセラピー)を行なう塩洞窟サナトリウムとして再利用されているとのこと。アレルギーや喘息、気管支炎、皮膚病などの治療に効果があるとされる。


 某テレビ番組(2012年2月22日放送)のアレルギー特集にて、「塩シンフォニー病院」【 Санаторийサナトリイ Солянаяソリャナーヤ симфонияシンフォーニヤー/Sanatoryy Solyanaya Symfonyya】として紹介されているのが(恐らく)こちら。




◆番外編

 岩塩坑とは呼ばれており、何らかの目的で採掘ないしは掘削されたものと思われるが、肝心の「採塩場所として活用されたことがある」と推定するに値する文章をどこにも見けられなかった岩塩坑。そのため「上級編」には入れず、別立てて「番外編」とした。



◇エカチェ●●リンブルクの岩塩坑【соляна шахта в Екатеринбург/Salt mine in Yekaterinburgエカテリンブルク

 ロシア連邦ウラル連邦管区スヴェルドロフスク州の州都エカチェリンブルクの地下(200メートルらしい)にあるという放棄された立ち入り禁止の岩塩坑。日本語での表記としては恐らく「エカリンブルク」の方が通りが良いと思われるが、ピョートル1世の皇妃であり傀儡の女帝でもあったエカチェ●●リーナ1世に因んで付けられた町名ということなので、じゃあ「エカチェリーナ1世をエカチェ●●リーナ1世と呼びたい派はエカチェ●●リンブルクと書くべきじゃね?」理論により、本エッセイでは「エカチェ●●リンブルク」とする。

 蒸発岩型ハロゲン化鉱物である岩塩と、多少成分は異なるもののでき方は同じカーナライト(ナトリウム&塩素ではなくカリウム&マグネシウム&塩素。肥料またはカリウム&マグネシウムの原料)と、その他ミネラルなどが堆積してサイケデリックなマーブルを形作ったもの。

 自前は元より転載可能なフリー写真も持たない身故にここに写真は貼れないが、サイケデリック・マーブルに目をチカチカさせたい方は、「エカテリンブルク 岩塩坑」か「カーナライト」で画像検索されたし。「Inside the psychedelic salt mine」で動画検索するのもアリ。




◆ユネスコ世界遺産編

 ユネスコ世界遺産へは、製塩業からは3つが登録されていると言える。それが、ポーランドの「ヴィエリチカ・ボフニア王立岩塩坑」【Wieliczkaヴィエリチカ andアンド Bochniaボフニア Royalロイヤル Saltソルト Minesマインズ】(2013年拡大登録。1978年登録当時の名称は「ヴィエリチカ岩塩坑」)、フランスの「天日製塩施設、サラン・レ・バン大製塩所からアルク・エ・スナン王立製塩所まで」【Fromフロム the Greatグレイト Saltworksソルトワークス ofオブ Salinsサラン-les・レ-Bains・バン toトゥ the Royalロイヤル Saltworksソルトワークス ofオブ Arcアルク-et・エ-Senans・スナン, the Productionプロダクション ofオブ Open-panオープン・パン Saltソルト】(2009年拡大登録。1982年登録当時の名称は「アルク・エ・スナン王立製塩所」)、オーストリアの「ハルシュタット-ダッハシュタイン・ザルツカンマーグートの文化的景観」【Hallstattハルシュタット-Dachsteinダッハシュタイン Salzザルツkammergutカンマーグート Culturalカルチュラル Landscapeランドスケープ】(1997年)である。


 「ヴィエリチカ・ボフニア王立岩塩坑」は初級編でも触れたが、文字通り岩塩の採掘坑であり、「天日製塩施設、サラン・レ・バン大製塩所からアルク・エ・スナン王立製塩所」もまた文字通り地下塩水を利用した製塩所である。特にアルク・エ・スナン王立製塩所は建築家クロード・ニコラ・ルドゥーが都市計画まで視野に入れて建設を手がけた(都市計画の方は、実際には途中で頓挫した)ことで知られる。「ハルシュタット‐ダッハシュタイン・ザルツカンマーグートの文化的景観」だけはやや分かりにくいが、ハルシュタットが岩塩採掘で栄えた町であることから、これもまた製塩業に関連するユネスコ世界遺産の一つに数えることができる。




 世界に分布する岩塩坑を駆け足でおさらいしましたが、「塩=白い黄金」という図式はどうやら、「まともな海塩が精製されていない時代の岩塩(の塩化ナトリウムの純度の高さ)」を限定的に称する言葉であるとお気づきいただけたかと思います。

 少なくともヨーロッパでは、海塩は「広大な塩田を駆使すれば、低コストでいくらでも大量生産が可能な塩(ただし品質は誰も保証しない)」と解することができるように思われます。そんな海塩の品質が向上していくにつれて、「白い黄金」として君臨していたはずの岩塩は、ある時は(コストが抑えられないという意味で)価格競争に敗れ、ある時は(塩化ナトリウム以外をほぼ含まないという意味で)品質で敗れるという、悲しい坂道を転がり落ちていく訳です。



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 「中世ヨーロッパ風」とキャッチーにぶち上げられる割に、「当時の権力と最も強力に結び付き、経済を下支えしていたはずの岩塩」が大きく取り上げられることはないようですが、異世界ではどんな塩ドラマ(いわゆる「塩対応」とやらとは意味合いが違いますよ、勿論)が待ち構えているのかと思うだけでも、心のときめきが止まらない今日この頃です。

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