異世界の塩事情◆後編
異世界でもやはり種という種は「塩という形体でナトリウム(と塩素)を摂取せざるを得ない」ものと仮定したとします。
あまりにも色んなところをいじくりまわしすぎると、読み手のストレスになるかもしれない点を考慮して、基本的な調味料やミネラルについてはあくまでもこの世界に則ろうというスタンスです。
その場合に本エッセイで猛烈に推したい塩は、ズバリ「植物塩」です。
作中に色々と設定が必要にはなって来る場合もあるかと思いますが、要は「植物から塩を採る世界があってもいいじゃないか、異世界だもの」ということを推したいわけです。
これなら「一味唐辛子」のような乾燥粉末路線で行くにしても「柚子胡椒」のようなペースト路線でいくにしても、非加熱での製造が可能なはずで、仮に増産するとしても、海塩のような燃料の心配も要りません。
海塩や山塩に合わせて「草塩」とか呼ぶのもいいかもしれませんね。
我々が生きるこの世界の植物は、一般的には塩分の多い環境では生きていくことができないということになっていますが、物事には何事にも例外はあります。
それが高い耐塩性を誇る「塩生植物」です。
日本にも二十種類以上が生えていて、シーアスパラガス(和名:
定義としては「海浜、海岸砂丘、塩湖岸など塩分の多い土地に生える植物」となっているのですが、干潟の、満潮になれば海水をどっぷりと浸かってしまうような場所に育つものも多くあります。
そのお味はといえば、例えばシーアスパラガス(和名:
さてこの「(高い耐塩性を誇る)塩生植物」ですが、「(高塩環境に適応した)好塩性植物」なんて言い方をしたりします。
この塩好きパワーをもっともっと高めていって、好塩性ならぬ「愛塩性植物」なんてものがあれば、そこから塩が採れそうな気がしませんか?
例えば「岩壁だとか遠浅だとか凍港だとかを理由にまともに港も作れないようなうらぶれた漁村にアッケシソウ擬きを持ち込んで、塩の一大生産地に生まれ変わらせる」なんて、異世界っぽくて楽しそうだと思いませんか? いや別に「灌漑による塩害に苦しむ寒村にアッケシソウ擬きを持ち込んでその地を蘇らせる」とか「食塩泉を活用してアッケシソウ擬きを育てることで山奥の村で塩作り」とかでもいいんですが。
※ちなみに「連作による塩害」の方の
勿論、植物は植物でも、この世界の植物の延長上にある必要はありません。
ここは書き手の腕の見せ所でしょう。
便宜上この世界の植物で説明しますが、例えば松の実やクコの実のようなパターンもありだと思います。たっぷりとナトリウムイオン(やその他ミネラル)を溜め込んだ松の実やクコの実。何なら砂糖楓ならぬ塩楓やテンサイ糖ならぬテンサイ塩なんてのもありかも。はたまた多肉植物でも面白いかも。その場合は塩トマトならぬ塩サボテン? それとも表皮にナトリウム(やミネラル)が集まる感じ?
いずれにせよ身近で幾らでも手に入る存在ながら、食べられない物として現地の人々には見向きもされていなかったそれらを、お馴染みの鑑定能力なんかで見出し、村を繁栄させるなんてのも楽しそうじゃないですか?
はたまた前回触れたような、「塩分を吸い取って液胞に溜め込む植物」なんてものがあっても楽しそうな気がします。これなら燃料のコスト面での心配も要らなくなるし、長期の航海であっても乾燥させた葉っぱ(粉末でも根っことかでもいいんですよ、別に)を大量に積んでおけば、真水の現地調達が可能になるわけです。「チートしようと思ったら不思議植物にノックアウト」なんてのも楽しくていいかもしれません。
これは塩に限ったことではないのですが、この世界との共通点があったりなかったりする中での創意工夫が、異世界物をより楽しくするのではないかと愚考するしだいです。
皆様の異世界での塩作りがより変化に富んだ楽しいものになりますように。
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我々の世界(オーストラリアや北アメリカの乾燥地帯)にはミツツボアリがいるんだから、異世界にはシオツボアリがいても良かったなと気づいたのは、2023年3月25日22時42分のことでした。
次の更新予定
異世界の塩事情 ペリヱ @perriwer
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