その発言は危険です!!
@JULIA_JULIA
第1話
ゴールデンウィークの中頃。陽気な空と同じく、僕の心は晴れやかだ。なぜなら楓さんと会っているからだ。彼女とは趣味が合うし、話をしていて楽しい。だから僕は陽気になっている。とはいえ僕は、いわゆる陽キャではない。陽気だけど、陽キャではない。どちらかといえば、陰キャ。しかし今は、陽気な陰キャだ。・・・なんだか、ややこしいな。
しかしまぁ、僕の心が陽気であることに違いはない。しかしそんな陽気な心は、やがて曇ることに・・・。
「でね、でね! そこで
・・・また、ダジャレですか?
楓さんが興奮気味に語っているのは、三国志のゲームの話だ。ちなみに
しかし、そんな事務仕事を生業とする
いや、それ以前に・・・。休日にオシャレなカフェへと男女二人で来て、三国志ダジャレを言っている所業こそ、鬼畜といえるだろう。
さて、三国志といえば、史実を
「・・・・・・・」
「ねぇ、聞いてる?
「あ、すみません・・・。
「ブハッ! アハハッ! や、やるねぇ・・・」
下らないダジャレの応酬。これこそが、楓さんが僕と会っている理由であり、中学時代に意気投合した要因だ。しかし、ただのダジャレではいけない。三国志がらみのダジャレでなければ、いけないのだ。それによって
とはいえ、流石に呆れてきた。飽きてはいないが、呆れてきた。会うたび、会うたび、ダジャレ三昧。華の女子高校生が三国志がらみのダジャレを連発しているとなると、三国志が好きな流石の僕でも、流石に引く。せっかく楓さんは、可愛い顔をしているのに。
「それから! それからね!
「でもね、総大将の
そのプレイ方法に、なんの意味があるんですか? ネタ作りのためですか?
「えっと・・・、三国志以外の話は、ないんですか?」
三国志ダジャレに呆れてしまっている僕は、ふと訊いてみた。楓さんは女子高校生なのだから、それらしい話題の一つや二つ、ある筈だ。いかに三国志が好きだとしても。
「え? 三国志・・・、以外?」
キョトンとした顔を見せる楓さん。その顔を見て、僕は思う。
そんなに意外ですか?
僕たちは、いつも三国志の話をしている。とはいえ、流石に驚きすぎではないだろうか。たまには三国志以外の話をしたいと望んだら、いけないのだろうか。
「あ! あった、あった! この前ね、珍しいモノを見たんだよ! それを写真に撮ったんだ!」
えらくゴキゲンな様子でそう言うと、自分のカバンからスマホを取り出し、手早く操作をして、その画面を僕に見せる。
「ほら! 栗とリスの写真!」
「ブフォッ!!」
思わず、吹き出してしまった。楓さんの発した言葉に驚き、吹き出してしまった。そして楓さんの大きな声によって紡がれた言葉により、僕たちの周りにいる客はそれぞれの会話を止め、皆が一斉にこちらを見た。
「ほらほら! よく撮れてるでしょ? 栗とリスが!」
「リ、リスと栗の写真ですね!!」
楓さんを凌ぐ大声で、慌てて訂正した僕。いや、訂正というよりも、修正か。とにかく順番が悪い。その二つは、前後を入れ換えないとマズい。しかも、どういうワケか楓さんのイントネーションが少し可笑しい。
「可愛いでしょ? この栗とリス!」
いやいや、ちょっと待って! わざとですか? わざと言ってるんですか? リスはまだしも、栗は可愛くないですよね? それはダジャレでは済みませんよ!!
「か、可愛いなぁ!! リスが!!」
「栗とリスの写真なんて、珍しくない? これ、ここの近くの公園で撮ったんだよ?」
露出狂かよ!
「ここの近くに、リスなんて、いるんですねぇ!!」
「初めて撮ったんだけど、キレイに撮れてるよね? この、栗とリス、キレイだよね?」
「リスと栗が、キレイに撮れてますねぇ!!」
「キミは好き? 栗とリス!」
「もうイイです!! 三国志の話をしましょう!!」
その後、楓さんは何事もなかったかのように、再び三国志の話をなんとも楽しそうにするのだった。
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