ハイスペ男子のやり直し!

れいん

第1話 ハイスペックな俺



ㅤ誰しも得意なことが少なくともひとつはあると思う。

ㅤ勉強、運動、料理などなど……

ㅤ自慢では無いが俺、如月奏斗キサラギカナトはその全てが出来る。


ㅤ勉強は授業さえ聞いていればテストで90点前後は余裕で取れるし、運動に関してはサッカーをやっていたのもあって尚更得意と言える。しかも顔もいい方だと思う。


ㅤ───そう、俺はハイスペックなのだ。


ㅤだけど、ハイスペックなだけだ。


ㅤいつからだろうか……俺は努力するのを辞めた。

ㅤ少し練習するだけでなんでも上達するから。

ㅤそうなった辺りから俺は他人を見下すようになった。

ㅤなんでこんな簡単なことが出来ないのか、そんな事をずっと思っていたと思う。

ㅤ次第と心の中で思うだけじゃなく、それを発言や行動に移すようになった。

ㅤこの頃に父親が家を出ていったから、それも相まってストレスが溜まっていたのかもしれない。


ㅤそれでも俺は実際に優秀だったから「奏斗くんすごい!」とか言われてた。それが気持ちよくてどんどん見下すような発言を繰り返す……そんなことを続けていた。


ㅤでもそれをずっと続けていれば最初は俺の事を褒めていたヤツらも離れていく、今考えれば当たり前のことだと思う。

ㅤだけどその時にはもう引くことができなくなっていたし、実際に他人を見下してたのは事実だったから結局中学卒業の日までそれを続けた。


ㅤそして卒業式の日でもいつものようにクラスの中心人物の男と言い合いをしていた時、こう言われた。


『如月はなんで自分のことしか考えられないんだ?確かにお前は勉強もスポーツもできるし、実際にすごい優秀なんだと思うよ。

でも、だからって他の人を見下すような発言をしていい理由にはならないだろ?

今、このクラスを見てみろよ、如月の仲間なんて一人もいない。お前このままじゃ一生孤独に生きていくことになるぞ?それでもいいのかよ?

お前はもう少し客観的に自分を見てみるべきだ、そして、そんな奴がもし自分の周りにいたらどう思うか……少し考えてみろよ』


ㅤこの言葉を聞いて、俺の見る世界が変わった。

大袈裟だと言われるかもしれない、でも確かに変わったんだ。

ㅤそれを言われた後、俺はずっと考えていた。

ㅤ俺は変わるべきなんじゃないかって……心の中ではこれが悪いことだって気づいてたし、このままじゃ本当に孤独に生きていくことになってしまうかもしれない。

ㅤそう思うと怖くなった。さっきまで人の見下してたのに今更とか言われると思うけど、てか俺も思うし……

ㅤでも嫌だった……だから、高校入学のタイミングで俺は変わることに決めた。



ㅤ───そして今に至る。

ㅤ俺は元々結構遠目の高校を受験していたんだけど、今になればそうしてよかった。

ㅤ新たなスタートを切るためには俺の事を知ってる人がいるとあんまりよくないと思ったからだ。


「よし…変わるんだ俺は…まずは笑顔で挨拶から!」

「じゃあ母さん、行ってくるよ」

「あら!いってらっしゃーい!」


ㅤもし中学の同窓会とかに呼ばれることがあるのなら……今までしてきたことを謝りたいなぁ……



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