BE MY BABY

第1話

ガタンゴトン。



毎日電車で通う片道一時間弱の距離は少しだけ俺を憂鬱な気分にさせる。



シャカシャカ。



少しヘッドフォンから漏れる音が大きかっただろうか。


隣に座っていた女子高生が俺の横顔をチラリと盗み見たのが視界の端で分かった。



仕方なく音量を落とし、俺はまた人混みの隙間から見える電車の窓の外の淡い空をぼんやりと眺めた。



いつも一時間眺める景色。


学校のある街までの景色。






"おはよう。あのね、今電車に大っきいミツバチが入って来ちゃってコワイよ。どうしたらこっちに来ないようにできるのかな(>_<)ノア"





そんな時、不意に見慣れた名前の人物から来たメールに俺は思わず笑を漏らしてしまった。




"大丈夫!ミツバチはあんまり人を襲わないらしいから(。>ω<。)ユキ"




メール打つの早!!!…なんて、初めて俺のスマホ捌きを見た人は目を真ん丸くするけれど。


ほんの数秒でそんな文章を返信し、相手から返信が来るまでの短い時間に少しだけ目蓋を閉じる。

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