第8話

"お互い成長出来ないから別れる"



どうして?



あたしたち成長する為に付き合ってたの?



あなたに"好き"って感情はなかったの?



あたしはそんな風に考える事が成長する事だっていうなら、成長なんかしたくない。



赤ちゃんのままでいい。



「ノア?」



「え?」



放課後数学科室に向かおうとしていたあたしを引き止めた声。



「久しぶり。ちょっと痩せた?」



小麦色の肌に爽やかな黒い短髪。

腕まくりした白いジャージの肩には大きなエナメルバックがかけられている。



「シュート先輩……」



サッカー部のキャプテンの彼は、この学校では珍しい爽やかな好青年タイプ。

スポーツ万能、頭脳明晰、おまけに甘いマスク。



……密かなファンも多い。まぁ、ちょっと鈍感な彼はそんな事に気付いていないけど。



「それにちょっと大人っぽくなったんじゃない?」



あたしに「赤ちゃんと一緒」と言った彼の、今のあたしにとって一番皮肉な言葉。



「……シュート先輩も、相変わらず元気そうですね」



「俺は"シュート"って名前の通りサッカーラブだからさ?じゃあ俺行くね」



「……うん、部活頑張ってね」

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