第10話

腕時計を確認する。



かー。まだ9時か。

都内に居た頃ならまだ夢の中だったな。



清々としている青く眩しい空を見上げながら垣根の外に出ると、寺の真ん中にある巨樹の葉を通した木洩れ陽が輝くように俺たちに降り注いだ。



デカくて立派な木だ。所謂"神木"というものなのだろうか。シデで飾られているその巨樹は、大人が数人で掛からないと囲む事も出来ないくらいに太い。




「なぁバンビ。何て木だろう?ケヤキか?樹齢、何百年なんだろうな?」



しゃがみ込み首輪にリードを付けながらバンビにしか聞こえない位小さな声で囁くように呟いた。


クンクンと鼻を鳴らしたバンビが俺を見上げる。




ホウキが床を鳴らす音が聞こえる。



授与場の方には、お守りなんかを売ったりするアルバイトの巫女さんたちが掃除をしていて、その目と鼻の先にジジィは近所の年寄りたちとワハハガハハと立ち話をしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る