第9話 執筆サークルの活性化

定期的な執筆サークルの活動が始まったその日から、私の創作意欲は新たな光を浴びて息を吹き返したようだった。

月に一度の集まりで、私は仲間たちの作品に目を通し、自らの作品を手渡し、意見を交わし合う時間を心待ちにするようになっていた。


サークルメンバーそれぞれが持つ人生経験や個性はまさに宝石のようで、同じテーマを与えられても、その形や色は全く異なっている。 

「猫」や「心の声」をテーマにした短編が机に並ぶたび、彼らの作品を読むことで私の心も踊り、新しい世界が広がっていくのが分かった。


とある集まりの日、進行役として私は「心の声」をテーマに設定した。

メンバーはそれぞれの作品を持ち寄り、発表が始まる。

静かな会議室に、時折笑いが漏れる。

それぞれの心の奥に隠された思いが言葉として紡がれる瞬間を共有するのは、まるで魔法のようだった。

その場に漂う空気が、私にとって何よりも創作への刺激となった。


「私たちの作品に、どれだけの人が共感してくれるだろう?」一人のメンバーが、作品を読み終えた後に呟いた言葉が私の心に刺さった。

確かに、私たちはそれぞれの想いを込めて作品を書いている。

けれど、それがどのように受け取られるかは分からない。

しかし、その分からない未来があるからこそ、創作には無限の可能性があるのかもしれない。


   ー作品の発表とディスカッションー

サークルの活動では、作品を発表した後にディスカッションの時間が設けられていた。

この時間は、私にとっても、他のメンバーにとっても、かけがえのないものだった。

自分の作品について話し、他者からの率直な意見を受けることで、作品の弱点や新しい視点が見えてくる。

自分の作品がどう受け取られるのか、どんな部分に共感してもらえるのか、さらにはどんな誤解を生んでしまうのか。

それを知ることは、自分をより深く知ることでもあった。


ある日のミーティングでは、私は猫が登場する短編小説を発表した。

猫とのふれあいを通して感じた「心の安らぎ」をテーマにしたこの物語は、自分の内側に眠る感情を映し出したものだった。

読み終えた後、私はしばらくの沈黙を感じた。

メンバーがどのように感じるのか、少し不安になりながらも期待していた。


「この猫は、君自身を象徴しているの?」一人のメンバーが静かに尋ねた。

驚いたことに、彼は私が無意識のうちに作品に込めた心情を見抜いていたのだ。

他のメンバーからも次々と感想が飛び出し、「もっと葛藤を深めてみてはどうか」といったアドバイスももらえた。

自分の作品がどう読まれるのかを知る機会は貴重で、私はこの瞬間に、執筆の喜びと挑戦の気持ちを改めて抱いた。


      ーお互いの成長ー

メンバーそれぞれが定期的にフィードバックを得ることで、自信を持って作品を発表する力がついていったように感じる。

最初は緊張していた彼らも、何度かの集まりを経て、次第にリラックスして自分の思いを語るようになってきた。

私たちの間には少しずつ信頼と安心感が芽生え、サークルはただ作品を発表する場にとどまらず、心を開いて対話する場所となった。


ある日、私はメンバーたちに提案をした。

「私たちのサークルを、もっと多くの人に知ってもらえたらどうだろう?」猫カフェでのワークショップを開き、新しい参加者を迎えようという提案に、皆の目が輝いた。

サークル内だけでなく、他の人々にも創作の楽しさや癒しを分かち合うことができれば、それが自分たちの成長にもつながると感じたからだ。


   ー新たな可能性と未来への展望ー

こうしてサークルは、新たな活動に向けて動き始めた。

猫カフェでのワークショップの計画が進む中で、私たちは地域の図書館やギャラリーでの展示や朗読会も視野に入れ始めた。

単なる作品の発表にとどまらず、多くの人々と交流する場を作りたいという思いが膨らんでいった。


「SNSで作品を発信するのもいいかもしれないね」一人がぽつりと提案すると、私たちはそのアイデアにも熱心に耳を傾けた。

オンラインで発信することで、さらに多くの人々に私たちの作品が届き、新しい仲間と出会えるかもしれない。広がる可能性に心が弾んだ。


そして、私は自分に対して小さな誓いを立てた。

どんなに小さくても、どんなにささやかでも、自分の作品が誰かに響く存在になりたい、と。サークルの仲間たちと共に成長しながら、創作の力が人の心に安らぎや勇気をもたらすことを信じて、私自身の執筆の道を歩んでいこうと思った。


サークルでの時間は、単なる執筆の場を超えて、私にとっては心の拠り所のような存在へと変わっていった。

創作の喜びを分かち合い、お互いに励まし合い、成長を見守る仲間がいること。

その安心感と期待感が、私にとって大きな力となり、また次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれたのだった。

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