トキメキ

水島あおい

第1章 デビュー

第1話

好きじゃない子と付き合うっていうのはこういう気分だろうか。

恋人が出来たっていうのにトキメキもドキドキもしない。

もうすぐ初デートだというのに楽しみも何もない。


ほらね。思った通り翌日にはクラス中、いや学年中が知っていた。

俺があいつと付き合う事。

見ればあいつは女子に囲まれて得意気な笑顔を見せている。

やっぱりね……

「ねえねえ、菅原君は梨花の何処を好きになったの?」

クラスメイトの女子が波音の席にやって来た。

「やだ。恥ずかしい…… 」

梨花は両頰を手で覆っている。

自分からみんなに言いふらしておいて恥ずかしいはないだろう?

菅原波音(はる)はかなり冷めた目でこの光景を見ていた。

波音は野球部のエースで顔はかなりのイケメンである。

当然、女子の人気も高かった。

「そういうのは2人の秘め事だろう?」

波音はサラッと言った。

その次の瞬間に女子達の間から悲鳴が上がる。

「いいなあー!梨花羨ましい!」

「そんな甘い事言われてるんだ!」

「まあね」

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