第28話

瀬名は部屋の壁に貼ってあるポスターに響が手早くサインするのを見て、胸が一杯になっていた。

「ありがとうございます」

響は壁に掛けてあるピンクの衣装を見て言っ

た。

「これ、フリーの時の衣装だよね」

「はい。母の手作りなんです。これを見ていると勇気が湧いて来て…… 」

「そう。家族みんなで応援してくれてるんだ

ね」

「はい」

瀬名は頷いた。

「スケートは何歳の時から?」

「5歳です。仲の良かった女の子がスケートの体験教室に行くので誘われて。凄く楽しくてそれがきっかけです」

瀬名の話を聞いて、響は思わず笑顔になった。

瀬名は、胸がドキドキして顔を上げて居られない。

「どうしたの?」

「大友さんが素敵で…… 」

「瀬名ちゃん……って言ってもいいかな」

「はい」

瀬名は赤くなって頷いた。

「スケートが嫌になった事はないの?」

「一度もありません」

そこへ響のケータイが鳴った。

見れば真野からである。

「分かった。もう行くよ」

響はケータイを仕舞うと、残念そうに瀬名を見た。

「俺、もう行かないと。じゃあ、瀬名ちゃん。しっかり身体治してね」

「はい。ありがとうございます」

こうして響は瀬名の家を後にした。

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