第27話
それは12月30日の夜だった。
その日は瀬名の誕生日である。
瀬名が居間でテレビを見ていると、母親が入って来た。
「瀬名、お友達がお見舞いに来てくれたわよ。大友さんですって」
「え?」
母親に続いて居間に入って来た響を見て、瀬名はびっくり仰天して言葉も出なかった。
響はセロファンに包まれた可愛いテディ・ベアを持っている。
「足の具合はどうですか?」
「あ、あの。大友響さん?本物ですか?」
瀬名はまだ状況を把握出来ていない。
「はい。本物です。15歳の誕生日おめでとう」
響は瀬名にプレゼントを渡した。
「あの……どうして誕生日を知っているの?」
「俺は立原瀬名のファンなんです」
響はあっさり答えた。
瀬名の瞳が涙に潤む。
「ちゃんと足を治して、また演技を見るのを楽しみにしているよ」
「ありがとうございます!」
瀬名は堪らなくなって涙を零した。
そこに母親が入って来て言った。
「あの、何処かでお会いした事ありません
か?」
「お母さん、何言ってるの!人気俳優の大友響さんじゃないの!」
瀬名は真っ赤になっている。
「えーっ!そんな方が瀬名のファンなの?」
「はい。凄く勇気づけられるんです」
「それは瀬名の方ですよ。この子ったらあなたの大ファンで。あなたのドラマとか欠かさず見てるんですよ」
「お母さんったら!」
瀬名は恥ずかしくて顔も上げられない。
「嬉しいです。ありがとうございます」
響は柔らかな笑顔を見せた。
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