第10話

「関係者以外立入禁止なんだけど」

愛が練習を見ていた所、姫井桜がリンクサイドに滑って来た。

「でも、ついさっきまでは他の人達も」

愛が言いかけたのを遮って桜が口を開いた。

「午後7時からは選手達の時間なの。悪いけど帰ってくれる?」

愛はリンクを去ろうとした。

だがその目は何度も4回転トウループを決めている晃也に向けられている。

桜はそのまま練習に戻ってしまった。

愛は名残惜しい気持ちを残しながら、リンクから歩いて行った。

スケートセンターの外に車が止まっていた。


後部座席に座った愛はガッカリしていた。

「どうしました?彼に会えなかったんですか?」

「午後7時からは選手の時間なんだって。追い返されちゃった」

「練習は何時までなんですか?」

「9時まで」

「そうですか」

「5分でも見たかったのに」

愛はしょげている。

悠はそれ以上何も言わずに、車を走らせていた。

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