第29話

箱根駅伝が終わった直後から、来年の箱根に向けての闘いが始まっている。

吐く息が白くなるような坂を歩希は今日も走り抜いていた。

学校の周りの道を10㎞往復で走る。

もちろんタイムもキチンと測っている。

咲香がタイムを歩希に伝えた。

悪くはない。

だが鍛えなければならない面は沢山ある。

スタミナをつける。

メンタルの強化。

今よりももっと強い自分へ。

そんな中で歩希は今、自分の心と闘っていた。


いつの間にか歩希の心には咲香が入り込んでいた。

只の部員とマネージャーの思いだと自分に言い聞かせているが、自分の心の中で咲香の存在がだんだん大きくなって行った。

だが咲香には阿部がいる。

歩希は苦しかった。

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