第18話

沿道には沢山の声援が聞こえる。

沢山の大学の幟も見える。

その中を白バイに先導されて、歩希は走っていた。

身体は軽い。

コンディションは悪くない。

歩希が走るのを沿道から両親が応援してくれる事になっていた。

腰の悪い祖母は家で応援だ。

今頃はテレビを見ているだろう。

「お前が陸上をしているなんて驚きだよ。小学校の時は走るのが苦手だったからねえ」

今年の箱根駅伝に出場が決まった時は最初、両親は信じなかった。

でも本当だと分かって、初めて父が褒めてくれた。

父は厳格で厳しく、褒められた事がなかった。

走っていると、そんな父の顔が頭に浮かんで来る。

「歩希!頑張れ!」

大観衆の中でもはっきり分かる父の声がした。隣に母もいる。

歩希は右腕を築き上げた。

そのまま走り去って行く。

空には青空が広がっていた。

11月にしては少し暑さも感じられた。

歩希の前に氷室学院大学の選手の背中が見えて来た。

歩希は車道側に並んで暫く走っていた。

抜けそうでなかなか抜けない。

そして相手も負けじとペースを上げた。

だが限界だったのだろう。

歩希は抜いて行った。

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