第7話
それから歩希は更に陸上への思いを強くした。1秒でも早く、1歩でも前に走るために、そしてスタミナをつけるために練習に明け暮れた。
歩希は寮に入っていた。
陸上部は毎日午後7時まで練習しているので、戻って直ぐに夕食を食べた後、風呂に入っていた。
風呂から上がると漸く自由時間だ。
ルームメイトが丁度同じ陸上部の早瀬だったから話が弾んだ。
「俺さ、好きな子がいるんだ」
「誰?」
「マネージャーの臼井先輩」
その名前を聞いた瞬間、歩希の胸にチクリと小さな痛みが走った。
「へえー」
「歩希、お前は?」
「特にいないな…… 」
歩希はそう言うと大きく伸びをした。
消灯時間は午後11時であるが、歩希達陸上部員はその前にもう寝ている。
明日も早朝練習が6時からあるからだ。
それまでに朝食を済ませて、大学に行かないといけない。
それが毎日の日課だった。
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