第20話

相生君には余りいい噂は聞かなかった。

自分から女に声を掛ける事はなく、女から言い寄られても決して女に本気にならず、関係した後一方的に捨てる。

その噂を聞いても静香には信じられなかった。だってあんなに優しい笑顔を私は初めて見たから。

…どうぞごゆっくり…

あの時、彼が淹れてくれたコーヒーの温もりと共に言ったあの言葉。たった一言だったけどあの言葉と彼の優しい笑顔に私の気持ちは安らいだから。

ああ、この人は優しい人なんだ。

私はそう思ったんだよ。

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