第11話

静香が帰る時はまだ空は夕陽に照らされてはいない。家に着いて宿題に取り掛かる頃,空が夕焼けに包まれてオレンジ色に染まる。静香は自分の部屋のガラス窓を開けてベランダに出る。暖かい風に包まれながら今日も何もなかったな…と思う。

父の帰りは遅い。

父はサラリーマンだ。

母が亡くなって7年。

まだ再婚する気はないらしい。

父にだって夢はあったはずだ。

でも普通の大学を出て普通に就職して母と出会い、結婚した。

職場結婚らしい。

でも私はまだ知らなかった。

平凡な日常,普通の生活がどんなに幸せなものなのだと言う事を。

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