第24話
陽乃が見ている……
そう思っただけで、気持ちが和らいで来る。緊張感も溶けて消えていく。
「21番、奥沢凪、日本!」
英語でアナウンスが流れ、観客達の拍手の中、凪はリンクの中央まで滑った。両手を高く広げて観客に応える。
フリーは海の上のピアニスト。
その曲に合うようにコバルトブルーの衣装が眩しい。
ポーズを決めると、曲が流れ始めた。
柔らかな動きからイーグルに入り、そこから4回転トゥループ、3回転トゥループの連続ジャンプ。それを終えて海の流れのように優しい動きの後、レイバックスピン。それから後半に入って4回転フリップ。
決まった!
凪は小さくガッツポーズをした。
そして残りのジャンプも全て成功させてフィニッシュを迎えた。
ノーミスで演技を終えた凪は大きくガッツポーズをした。
そして観客達に丁寧に頭を下げた。
リンクサイドに戻って行くと、山野が待ち構えて抱き合った。
「よくやったぞ。凪」
そして凪と山野はキスアンドクライで得点を待った。
トータルで232.11。
回転不足を一つ取られていた。
だがこの得点を超えられる者は他になく、凪は世界ジュニア選手権に優勝した。
優勝が決まった瞬間に、凪は同じジュニア選手権を闘った西沢伊織と固く抱き合った。伊織は5位である。
こうして凪は金メダルを首に掛けられた。2位はロシアの選手で3位がアメリカのグレミー・ギレンである。
国家が流れ、凪は歌った。
まだ、この場に立っている事が信じられなかった。
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