第5話 ガイアの章:ピグ討伐編

ガイアの章:ピグ討伐編


北へ移動し砦のあった場所にたどり着いた。

「うげ、なんやこれ。えらいありさまやな」

サーカさんがそう言うのもわかる。

自分がやった事とはいえ、反吐が出そうな光景だ。


『カタキを討つからな』


「ん?なんかゆーたか?」

「いや、何も。ここから西の森へ向うぞ」

足早に砦跡を立ち去り西へ向った。


「ほんで、こっちは何があんのん?」

「ピグのアジトだ」

「ほんまかいな。っていうか、なんでわかんねん」

理由を言っても仕方が無いので答えずに話を続けた。

「ここからは全力でピグを殲滅させる!」

「おーおー、なんや知らんけど気合はいっちゃってー。どないしたんやガイアちゃん」

口調はおちゃらけているが、明らかにサーカさんの目つきが変わった。


しばらく森の中を進むと見張り小屋が見えてきた。

ど、同時に嫌な光景も思い出した。


ゴクリッ!


「ガイアちゃん、緊張しちゃってどないしたんや」

「いや、なんでもない」

「ほんで、策は?」

「とりあえず、門の手前には落とし穴がある。あと矢も飛んでくる」

「で、そっから先は?」

「ない」

「なんやそれ、でたとこ勝負かいな」

「あ、年老いたピグは厄介だから頼む」

「りょーかいっ!」


「行くぞ!」


一気に門に向って駆け抜けた。

落とし穴はそのままの状態だった。

ゴブリが来ないと思って油断しているのだろう。


門の中に入ると何匹かピグが居たが臨戦態勢になっていなかったので、あっさりと倒した。


「これからが本番っちゅーわけやね」

サーカさんの言うとおり。

わらわらとピグが出てくる。


「ほらほら、そんなとろくさい動きやとオレをつかまえられへんよー」

サーカさんの剣術は舞を踊っているようである。


『とりあえず右側のやつから狙え。味方に当たってもかまわん。どんどん矢を放て』

聞き覚えのある声が聞こえてきた、ピピロが非情な指示を出した。

「サーカ、矢が来るぞ!気をつけろ!」

「へ?ピグが周りにおるのに矢なんかとんでけーへ・・・おわーっ!」

間一髪で避けてくれた。

「マジかこいつら。味方まで殺しとるで」

「気を抜くなよ、サーカ!」


『グヌヌ、何故矢が飛んでくるのがわかったのだ。構わんどんどん矢を放て!』

「まだまだ矢が飛んでくる、キリがないから弓矢隊から倒すぞ!」

「それはえぇけど、どっから上のぼんねん」

「右の部屋に階段がある。弓矢隊の注目をこっちに向けるからその間に登れ」

「そんなとこに階段なんかあるわけな・・・ほんまや。っていうか、なんで知ってんねん」

「いいから、だまって登れ」


とはいえ、ピグを倒しながら矢をかわすのはさすがにきつい。

盾があるので致命傷になる攻撃は受けて無いが切り傷は増えていく。


あと何匹ピグがいる?

あと矢はどれだけ飛んでくる?

サーカさんはまだか?

焦りが出てきたその時。


ズルッ!


ピグの血で足を滑らして体勢が崩れてしまった。

ヤバイ!

矢が迫ってくる!


ザクッ!

『グァッ!』


グァッ?この声?

『標的にされるぞ、止まるな!』

『ビ、ビブリ!』

目の前には左肩に矢が刺さった状態のビブリが居た。

複数のゴブリがアジトになだれ込んでくる。


『なんでここに?』

『話はあとだ!早く体勢を整えろ!』

ビブリの言うとおりだ。

のんびり話をしている場合じゃない。


「ガイアちゃんは簡単にゆーてくれたけど、ピグいっぱいおるやんけ。おまえらのけー!」

サーカはピグを斬り倒しながら階段を登っていく。

「ちょっと時間くってもーたけど、ガイアちゃんは無事かいな、ってゴブリもよーさんおるやんけ」


どうやらサーカさんは上にたどり着いたようだ。

「こっちはいいから、サーカ、早く弓矢隊を倒せ!」

「なんやようわからん状況やけど、一気にやったるでー!」


矢が飛んでくる数が減っている。

サーカさんは順調に弓矢隊を倒していっているようだ。


「お、あのじーさんみたいなやつが、やっかいっちゅーてたやつやな」

『いつのま・・・』

ズバーッ!

ピピロの断末魔を聞くことも無くサーカさんが首をはねた。

司令塔を失った弓矢隊は烏合の衆。

残りもサーカさんが殲滅してくれるだろう。


『グヌヌ、ピピロのやつも全く役に立たん。やはりワシ自らが出るしかないか。』

のっそのっそとビッピルが現れた。


『ガハハ、あの時の若い剣士か。ずいぶんと傷だらけだがワシに勝てると思ってるのか』

「お前はオレが必ず倒す!」


ブォーン!

移動速度のわりに石斧を振り回す速度は速く、ビブリよりも力強い。

盾では防ぎきれない。

少しでも自分の速度をあげるために盾を捨てた。


ブォーン!

ブォーン!


ギリギリではあるが、これで石斧はかわせる。

しかし、斬っても斬ってもダメージが通らない。

活路はあるのか!?


すると巨大な影がビッピルに向って飛び掛る。

ビブリがビッピルに攻撃をしかけていた。

『ゴブリが何故、人間の味方をする』

『相変わらずブヒブヒうるさいヤツだ』

ビブリが棍棒を振り下ろすとビッピルが石斧で反撃する。

棍棒はどんどん削れていく。


急いで活路を見出さないとビブリが危ない。

と、いうより何故ビッピルは動かないんだ?


「そうか!」

ビッピルが上からの攻撃に集中している間に体を低くしすばやく足元を狙って斬り込んだ。

『ウガァァ!』

ビッピルが悲鳴をあげて動きが鈍る。

ビブリと同様にビッピルも矢傷が癒えてないようだ。

連続して足元を切り込む。


『ギャアアアアアアアアアー!』

ビッピルが崩れ落ちた。


剣先をビッピルの顔の前に向けてピグの言葉で話した。

『ビッピル、タスト村に手を出さないと誓えるか?』

『グヌヌ、生意気にもワシに命令する気か。』

この状況でも相変わらずのふてぶてしさ。

『ワシもこの足ではしばらくは動けん。村には手を出せん。』

その言葉を聞いて剣を鞘に収めようとすると・・・

『だが、オマエはここで死ねー!』

ビッピルが石斧を振り下ろしてきた。

予想通りである。

こいつはこういうやつだ。


スバーッ!

攻撃を読んでいたのですばやく避けてビッピルの首をはねた。


残りのピグ達はゴブリが撃退して完全にこのアジトを制圧した。

『これでピグとの争いは終わりだー!』

ビブリが勝ちどきをあげる。

おおー!

ゴブリ達の歓声が沸きあがる。

『若き剣士よ、約束は守ろう。この辺りで人間を襲うやつが居たら助けるようにゴブリ達に言っておく』

どうやらこれで村周辺の治安は守られそうである。

『時に若き剣士よ。おまえの名はなんという?』

『ガイア・・・いや、メムロだ』

『メコブーではないのか?』

僕は何も言わず微笑んだ。

ビブリも微笑んだ。


「ガイアちゃーん、何ゴブリとブツブツ言ってんの。お宝貰ってはよ帰ろー」

いつの間にかサーカさんが満面の笑みで両手一杯に財宝を持ってアジトから出ようとしていた。

「まったく、オマエってやつは」


村が見えてきた。

さすがに今日は疲れた。


「ガ、ガイアちゃん、やばいで」

サーカさんが真っ青の顔をして言ってきた。

「はぁ、仕方ないか・・・」

村の入り口には鬼の形相をしたセイドさんが立っていた。

今日一番の強敵出現って感じか。


ギルドでこっぴどく叱られた。

「いや、ガイアちゃんが、こっちのがおもろいでーってゆーてきたんよ」

サーカさんが苦し紛れの言い訳をしている。

当然セイドさんには通用しない。

むしろ火に油を注いだだけだ。


翌日:ギルド内


昨日の出来事をセイドさんに伝えた。

「なるほど、ピグは全滅してゴブリは村を襲ってこないと」

「そうなんよー、オレとガイアちゃんで、ちゃちゃーっと懲らしめたんよー」

サーカさんが得意げに話す。

昨日まで人のせいにしていたくせに。

「わかったわかった。では今日も村の修復にとりかかるか」


「セイドさん!オレ、ちょっと旅に出ます!」

「何を言い出すガイア、昨日の冒険で味をしめたのか?」

「い、いや、そういうわけじゃないですけど・・・」

「ダメだ!と言ったところで、また勝手に抜け出すんだろ。ちょっと待ってろ」

セイドさんが諦めた顔をして机に向って何かを書き出した。

「ほら、これを持ってナトリへ向え。そこのギルドに紹介状を書いた」

「あ、はいはーい。オレもガイアちゃんについてくー!」

サーカさんが割り込んできた。

「オマエは絶対にダメだ!昨日の分も働かせる!」

「そんなアホな~」

セイドさんに引きずられてサーカさんがギルドから出て行った。


サーカさんには申し訳ないが今は1人で旅をしてみたい気分なのだ。

とりあえずナトリを目指すか。


ガイアの章つづく

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