第6話【初めてのコラボ配信3】

 俺とルナちゃんがコラボ配信をしている一方、同時刻にとある配信が行われていた。

 それはアリスちゃんと雫ちゃんのコラボ配信だ。

 雨宮雫ちゃんという人はルナちゃんと同様ブイラブに所属しているVTuberで、チャンネル登録者数は九十万人を超えている。

 雫ちゃんは水色の長い髪に白のメッシュを入れており、胸元には雫の形のペンダントが綺麗に輝いている。

 そんな二人の配信内容は俺とルナちゃんのコラボを見ながら雑談をするというものだった。


『本当にヤダ! 彼方くん何してんの! 絶対に許さないから』

『これは彼方くん何も悪くないでしょ』


:諦めろ雫

:運も実力のうちだ。


 雫ちゃんとアリスちゃんは配信が始まってすぐにとある賭けをしていた。

 それはルナちゃんが俺に一勝でもできるかどうかという賭けだ。

 雫ちゃんはできないに、アリスちゃんはできるに賭け、勝った方が負けた方に罰ゲームを課すというものだ。


『え……アリスちゃん信じてるよ……? 優しい罰ゲームにしてね?』

『でもなぁ~、彼方くんに何してんの! なんて言ってたしなぁ~』

『ね~! 言ってないってぇー!』


:息をするように嘘を吐く女

:これは容赦なしで良いよアリスちゃん


『リスナーの皆もそう言ってるしな~。まぁルナちゃんも初ホラゲーするわけだし、雫ちゃんもホラゲー配信いってみようか』

『私、雨宮雫は今日をもちましてVTuberを引退させていただきます。みんな今までありがとう。大好きだよ』

『ダメです。させません』

『ねー、本当にやだ! ホラゲーはもうトラウマだから! 私がどうなってもいいのか⁉』

『諦めなさい雫ちゃん』


 その後も約十分間罰ゲームの変更を訴えた雫ちゃんだったが、結局ホラゲー配信をする事になった。





『えーっと……一対十四でルナの勝ちかな?』

「俺の勝ちですね」


:彼方、勝ってくれてありがとう。

:これでこそ彼方だ。

:ルナちゃんはいつになったら勝てるのだろうか……。


「じゃあ約束通り月宮さんにはまた今度セリフを投稿してもらいましょうか」

『あー! 本当にやだ! 同じVTuberの人にセリフとかASMRとか聞かれるのが一番恥ずかしいんだから!』

「俺はボイス系は一切やった事ないから分からないですね。そもそも俺のボイスは需要ないですから」

『え! 需要凄くあります! 是非やりましょう、今すぐやりましょう!』

「嫌ですけど月宮さんが今回の企画をまたやって俺に勝ったら考えます」


:ルナちゃん絶対勝て。

:負けたら登録解除するぞ。

:次勝たなかったらいつ勝つんだ。


『ちょっと任せてみんな! ルナ毎日十時間練習するから!』


:二十四時間やれ。

:甘えんな。

:それが許されるのは小学生までだよな。


『え、ちょっとみんな今日ルナに当たり強くない?』

「ま、まぁみんなもそれだけ期待してるんですよ」

『でも次は負けません! ……ん? なんかアリスちゃんと雫ちゃんから配信で喋っても良いかって来てるんだけど彼方さんはどうですか?』

「俺は勿論大丈夫ですよ」

『じゃあ早速呼びましょー』

『やっほーアリスと』

『雨宮雫です……』


:あれなんか雫ちゃん元気なくね?

:詳しくは雫ちゃんとアリスちゃんの今日のコラボ配信で。

:二人コラボしてたんか。


『それで二人は何を話しに来たの?』

『それはリスナーの皆にとっては超重大発表になるのかな』

『さっき社長から連絡があってね、なんと彼方くんをブイラブ事務所へご招待します!』

「……え? 俺をブイラブ事務所に招待⁉」


:ちょっと待ってどういう事?

:彼方がブイラブ事務所に所属するって事⁉

:理解が追い付かないんだけど。


『事務所に所属するとかそう言う事じゃなくてね、この前話したルナちゃんと彼方くんのホラーゲームコラボ配信なんだけどね、なんとオフコラボが決定したの!』


:マジで言ってるの⁉

:オフコラボ⁉ 急展開すぎる!

:激熱展開キタ。


『それでまぁ流石にね、どちらかの家ってわけにもいかないじゃん? お互いに変な噂だったりされちゃうかもしれないし。だからオフコラボの配信場所はブイラブ事務所のスタジオにしようって話になったの』

『そういう事だから皆お楽しみにね!』

『うぅ……ホラーゲーム配信じゃなかったら凄く楽しみなのに……』


 それからコメント欄は今まで見たことのない速度で流れた。何一つとして読める気がしない。


『あ、彼方くんは許さないからね?」

「え……どういう事?」


 なんか雫ちゃんから聞いたことない冷徹な声が聞こえたんだけど……

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