繋ぐ雨

Rotten flower

第1話

朝の天気予報によると、降水確率は20%、運悪くその20%を引いてしまったようだ。たまたま駆け込んだところは本屋さん。時間の流れが感じられるような店内だ。

「すみません。」

店内からの返事はなかったが、試しに入ってみることにした。怒られたらその時だし、何しろ入る時に声かけはしたのだから。

お店に入ると、木の棚に木の床。橙色の電灯などで、木に包まれた感覚がした。没入感のあるデザインでその頃には外の雨音はもう聞こえなくなっていた。

「思ってたより広いかも。」

私の家の二、三倍ばかりは大きく感じる。蔵書の数はかなり多そうで、古そうな本が多く並んでいた。ライトノベルコーナーはかなり小さい。

目の前にあったオカルト小説をそっと眺めてみる。

「雨音と霊」、「火ノ鳥」、タイトルだけで目を引くものが多い、がそういうものは大体タイトルだけで見たら面白そうなものの買ったらそこまでつまらないしまるで詐欺だったというものの方が多い。この前買った「異世界の〜」とか何とか長いタイトルの作品も上澄みだけ飲んだらあとは透明でほぼ無味だった。

パラパラと中身を読んでも面白そうなものはない。

「雨の日に近所を通っていると若い頃、ロングヘアだった姉が時折現れるんです。もう、事故死したはずなのに。」

なんて、偉く現実と乖離したフィクションだ。文体が上から目線なのも鼻につく。

私は本を元の場所に戻すと店内を回り始めた。

本屋の一部は店主の趣味コーナーみたいな部分があった。

独特なデザインのお猪口に趣味の悪いピエロの人形が綺麗にショーケースの中に飾られていた。

正直に言ってはなんだが不気味だ。

「あ、お姉さん!」

十歳くらいの少女が金属製の脚立を軽々と持ってやってきた。慣れた手つきで脚立を設置してショーケースの中に飾られている人形を触る。

「ねぇ、そんなことして怒られないの?」

「怒られたらその時でしょ。私、人にイタズラするの好きなんだ。」

私よりも酷い楽観視だ。彼女はそういうと、ピエロの首だけを外してどこかへ行ってしまった。首が転がっている影響でより不気味になってしまった。直そうにも手が届かないので私はどうしようかの悩んでいると、腰が曲がった店主のような人物が近づいてきた。重たそうに脚立を持ってくると登って人形を慣れた手つきで直した。

三十歳程度の人が後を追ってお爺さんへと話しかける。

「いつも、雨だとこんなことが起こる…。もう監視カメラつけたほうがいいんじゃないですか。」

「いや、私もこれを楽しみにしているもんでね…。このためだけに人がきてくれているって思うと少し嬉しいんですよ。」

後を追った人がため息をつくと二人してどこかへ行ってしまった。

外を見ると少し雨はおさまっていて今にも晴れそうだった。

まだもう少し店内にいようかなと思うと視界がふらっと揺れて、私は後ろに倒れた。


あれ、ここは…?

見慣れた天井。そうか、家のベッドで寝ていたんだ。夢を見ていただけか。鮮明に思い出せるあれも、全ては一夜限りの夢に過ぎなかったんだ。

いつも通りカバンを持って家を出る。

「今日は妹さんに会えた?」

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