48 プロポーズ

「リリー、お願いがあります」といつもは向かいに座っているハリソンが隣りに座り、わたしの手を取って言った。


これはもしかしてプロポーズと言うものだろうか?


ハリソンがプロポーズしてきたらどうするか、わたしは考えたことがある。正直に言えば何度も考えた。


でも、この場面でそれが思い出せない。どうしよう・・・と困っていたらハリソンは始めた。


「リリー、わたしと結婚して下さい。わたしは年下だし、魔法士になる才能もありません。


騎士になる才能も根性もありません。王族であることくらいしか・・・取り柄はありません。それだって取り柄といえるか、わかりません。


でも、リリーを心から愛しています。ですからリリー、わたしと結婚して下さい。


リリーが未亡人になりたいと思っていることを知っています。


わたしはリリーがいない世界で生きていたくないので、先に死にます。


ですから、リリーは未亡人になれます。ちゃんと願いは叶います。


未亡人になったリリーをわたしは草場の陰から見守ります。


リリーが男性に誘われても焼きもちを焼いたりしません。うーー少ししかしません。


ですから、リリーわたしをあなたの夫にして、世界一幸せな男にして下さい」


言葉が途切れたから、わたしは伏せていた目を上げた。


ハリソンと目があった。見慣れた青い目のはずなのに、違って見えた。


わたしが映っている。こんなに近い。嫌じゃない。わたしはがんばって微笑んだ。出来たと思う。


微笑んで答えた。


「はい。ハリソン」



結婚準備で、新しい宿舎と言うか離宮に引っ越した。離宮と言ってもそんなに離れていない。


単なる呼び名だ。


結婚してもハリソンは、王族のまま。今までと同じなのでわたしは気楽だ。



動物のための裏庭や、大きな木があるし、裏手は森になっている。


準備するのに便利だからって、ハリソンも一緒に引っ越して来た。


二人で連れ立ってドレスの仮縫いに行ったり、料理の献立の打ち合わせに行っている。


なんというか、デートの後、送って貰って、さようならじゃなく、一緒に帰って来るのってすごく幸せだ。



いつとはなく寝室が一緒になった。そして、ベッドも一緒になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る