47 責任者達

「揃ったから、始めようか。みんな見ていたと思うが、驚かされた」


「えぇ確かに。息子の披露の席で、あのような」と二人目が憤慨した声を出した。


「『あのような、素晴らしい虹を披露してくれてありがたい』といいたいんだよな」と三人目が言うと


「あのような、素晴らしい技を見せて貰った」と最初に発言した男が言った。


彼は続けて


「それにしても、素晴らしい。この世界の平和が惜しい。もっと殺伐としておれば」と言った。


その男に向かって


「陛下。冗談に聞こえませんよ」と宰相が言うと


「本気で言ってる。彼女のあの技は簡単に要人を暗殺出来る」と国王がため息混じりに言った。


「ですから、それは言ってはいけません」と宰相が首を振りながら言った。


「コリンの馬車だって、今は連結出来ますよ。悪路でも行ける。馬に関しても治癒できる厩務員が思ったよりたくさんいる。兵の移動が簡単で費用も抑えられる」と三人目の男、騎士団長が言った。


それを受けて四人目の男。ブルース隊長が

「確かにそうですね。空を飛ぶのも多分完成しますよ。人間、と言うか自分で乗って検証したがってます。禁止してますが、こっそりやるでしょう!

実用化されたら、上から攻撃できる」


「魔法士たちは、単純に生活の質を向上させる、便利な物を作ると思ってますから・・・」と騎士団長が言った。


「政治も頑張ってますからね。各国との関係はすこぶる良好」と宰相が言うと


「確かにそこはありがたいですね」と騎士団長が言った。


「厩務員のことを言っているが、ミシガン家で働いていた者たちか?」と国王が聞くと


「はい、報告書に書けないと思いまして・・・」と騎士団長が説明を始めた。


「あの家で雇われていたのは、その、どの家門でもそうでしょうが、代々働いています。


ミシガン本家から枝分かれして、平民になった者も、親や祖父母の縁で働いていましたので、ミシガンを名乗る者も多く・・・要はみんなどこか親戚ってことで、治癒を無意識にしているようです。


本人に自覚はないですし、はっきり言えませんが、どの馬もよく世話されてましたし・・・王宮の厩舎も彼らのやり方を取り入れようとしてます。


大事にしてますが、甘やかしてませんよ。今の所はまだ、馬の毛艶がよくなった位ですが・・・なんというか馬の筋肉もよくなったようです。


それで、提案なんですが、厩務員を育成する機関を作れないでしょうか?」


「機関。なるほど・・・いい馬は兵を助けるしな」と国王が言った。


それにたいして騎士団長はこう答えた。


「それもありますが、貴族に残れない者の受け皿になるかなと思いまして。騎士団に入れずに予備員で長くいるのも大変です、それなら厩務員になるのもいいのではないかと思いました」


「なるほど、家で肩身狭い者は王宮で働けばいいと」とブルース隊長は言った。


「一つ、決まった所で今月は終わりにしよう」国王が言うと


「細かい所は、ミシガン子爵にやらせましょう」と宰相が言った。


「頑張っているようだな」と国王が言うと


「はい、なんというか妙な迫力があります」と宰相が答えた。


「それでは、わたしは戻ります」とブルース隊長が立ち上がって出て行った。


「わたしも仕事をしないといけないな」と国王も立ち上がった。


宰相と騎士団長も立ち上がると国王を見送った。


二人は歩きながら話していた。


「あの、ソフィは誰かの仕込みか?」


「おまえがやったと思っていたが、違うのか?」


「あいつの仕込みか」「やりそうなことだ」


二人は顔を見合わせると、吹き出した。

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