28 面倒なブラックレイク家
「お二人はもう、婚約者がいるそうですね」とハリソン様が言い出した。
「はい、卒業したら結婚します」
「伯爵夫人になるんだね。ナタリー」
「パメラの拠点はこちら?あちら?」
「まだ、よくわからないですね」
「こちらに来たら、紹介して。パメラ」とハリソン様は二人に言うと
「リリー、ブラックレイク侯爵家が嫡男か二男をリリーを婚約させたいと言い出したらしい、
面倒になっている。ここには卒業前でも住めるから引っ越して来たらいい。
とりあえず、今日家に帰るのに、護衛と侍女をつける」
「まぁ、そんなことを言い出したんですか?あきれた。それと侍女は必要ないです。着替えも全部自分で出来ます」
「えっとそういうものか?」とハリソン様は二人を見て尋ねた。二人は頷いた。
「そうか。では護衛はつけるからな。そうだ。なにか足りないものはないか?庭にあずまやとかは?」
「いえ、なにも・・・充分ですよ。そうだ。運んで来たお食事はどれも美味しかったです。そうお伝え下さい」
「わかった。それではわたしはこれで」と言うとハリソン様は帰って行った。
「ハリソン様って親切ね」とナタリーが言うので
「馬の縁って大きいってことかな?それと魔法士って存在も大きい」と答えてると
二人がちょっと苦笑している。わたしはちょっと姿勢を改めると
「二人がゆうべ、いてくれて良かった。わたし。ほんとに、吹っ切れた。人間の体からあんなに水が出るとは思わなかった」と頭を下げた。
二人はわたしの頭を撫で、背中を撫でた。しばらく撫でた。それから二人は同時に
「なんだか、昨日からわたしたち、忘れっぽいね」と言った。
家に戻るとなんとまぁ、父が待っていた。
「リリー話がある」
「あとでね」と言って部屋に入った。ドアの前に護衛が立ってくれた。
「なにをする。わたしはこの家の家長だぞ」と父の声がした。
「わたしは王宮から魔法士を守るように派遣されています」と護衛が言うと
王宮と言う言葉に怯んだ父はなにも言えなくなった。
わたしは部屋で、引越しについて計画を立てた。家を出たら、この家に戻るつもりはない。
持っていかないものは全部処分しよう。そう思って部屋を見ていると
「リリーまだか?」と父の声がした。
「あとで」と返事した。もちろん、これはこの家に対する仕返しだ。
わたしに「また今度」も今度は来たことがない。これはわたしに対する拒否の言葉。わたしからの拒否の言葉。
夕食の時間だ。この家は気に入らないが食事は美味しい。そしてわたしは図太いので微妙な雰囲気でも美味しく食事が出来る。
今日はなんと前菜付き!きのこのマリネだ。美味しい。クラッカーが欲しいが我慢する。
スープは栗のスープだ。なんとも美味しいが、パンが来るのが遅い。
「パンを早くだして」と要求した。ここは我慢しない。このスープをお代わりしたいくらいだが、そうするとお肉が入らなくなる。我慢する。
お肉はチキン。パン粉をつけて油で揚げてある。美味しい。この家に生まれてよかったと思う。
デザートはコンポートだ。アングレーズソースも美味しい。
夕食の時、興ざめなことにブラックレイク侯爵家の二男あのロバート様との再婚約か、嫡男との婚約の話をされた。
美味しい物を食べている時に、業腹だったのでうんと不愉快な言い方で断った。
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