27 宿舎にて

用意して貰っていた夕食をすませて、わたしたちはベッドで話をした。


二人の婚約者とのお話や、そろそろ初めている結婚式の準備。そして二人がと言うより、二人のお父様がわたしに紹介したい男性のことなど・・・


「なんだか、王家にリリーを取られちゃった気分。ほんと、偶然に会わせていたら良かったわね」

「パメラもそう思う。わたしもそう思う。兄とか弟がいたら良かったのに」


二人が冗談ぽく言うのを聞いていたら、なんだか急に涙が出てきた。ナタリーの兄弟が婚約者だったら、そしたらナタリーの家族になれて・・・家族・・・わたしの家族はわたしを・・・わたしは。わたしは家族を・・・欲しかったんだ。あこがれていたんだ。ロバートがわたしに家族をくれるって思っていたんだ。


二人は黙ってわたしのそばにいて、手を握ってくれて、背中をさすってくれた。


ってことはなかった。なんだか嬉しくて声を出して泣いた。


いっぱい泣いた。すっきりして嬉しい気持ちが残った。




「ありがとうございます。夕べの食事も美味しくいただきました。せっかくですので暖かいうちに・・・すぐに彼女たちを起こします。いいえ、大丈夫です」


誰が喋ってる?誰?あっと目が覚めた。パメラだ。あわてて起き上がった。そして昨日のことを思い出した。恥ずかしいーーーーわたし、めそめそ泣いた。いっぱい泣いた。

恥ずかしい!布団に潜って一日過ごそう。ってことはだめ。ガウンを羽織ってリビングに行くと


「おはよう」と言った。

「おはよう。起きたね。食事が届いたわ。ナタリーを起こすから着替えて」

「うん」と返事をして「ありがとう」と言った。


着替えて髪を簡単にまとめた。


食事を並べていると二人が部屋に入って来た。


「おはよう」と挨拶を交わした。


「美味しそう」とナタリーが言った。そしてお湯が沸いたのでわたしはお茶を入れた。



食事は美味しかった。食器を洗ってカゴに戻した。それから外に出た。


「リリーは庭仕事は好き?」

「ううん、綺麗な庭を見るのは好きだけど自分で世話するのはそんなに・・・」

「同じだわ。パメラは」

「鉢植えを買ったことがある」

「それで」と聞いた。

「侍女が世話してくれてる」

「パメラーーー」

「わたしたちは、その、なんというかーー似てるのかな」とわたしが言って大笑いをした。


それから、家に入ってお喋りした。卒業までにパメラの所とナタリーの所へも泊まりに行くことになった。


時間を忘れて喋った。



ドアがノックされた。

「ハリソンだ」と声がしてもう一度ノックされた。

あわてて開けると間違いなくハリソン様だった。開けたはいいが、ぼけっとしてしまった。だって、おおきなカゴを持って一人だったから。

「入っていいかい?」

「どうぞ」とあわてて、ドアを大きく開いて脇によけた。

「お邪魔するよ」とハリソン様は入って来た。

「リリーのお友達だね。ハリソンだ。ここでは様はいらない。ハリソンと呼んでくれ。リリーが見本を見せて」

「はい・・・はい。ハリソン」

「はい、パメラ嬢から」

「ハリソン。こんにちは」

「こんにちは、パメラ」

「次はナタリー嬢」

「はい、こんにちは。ハリソン」

「こんにちは。ナタリー」

「お昼とあなたがたと食べたくてお邪魔した。仲間に入れて欲しい」

固まっている二人は頼りにならない。だからわたしが

「もちろん、ハリソン。えっとな・か・よ・く・し・ましょう」と言った。

「ど・う・も・ありが・とう」とハリソン様が答えると、固まっていた二人が動き出した。

「そしたら、並べていてお茶を準備する」と言うと三人は仲良くお皿を並べだした。



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