22 王宮魔法士部隊
「それはそうとリリー。馬だが」
無言で次の言葉を待った。
「馬だが・・・あの馬だが・・・その・・・」
「お父様、わたしも馬が欲しいですわ」
「なにアナベル。馬が欲しいのか?」
これで、あの馬のことが話題になることはないわね。
「はい、わたし次は乗馬で競技会に出ます」
「そうか、なら大人しい馬がいいな」
「それでは失礼します」とわたしは席を立った。なんだか、消化不良でおもしろくない。
でも、これくらいでいいのかな。もうすぐ離れる家族だ。
ロバート様はアナベルを迎えに来ているが、なかなか手首の痛みがとれないようだ。侯爵家に出入りする治療師はそれなりだろうけど、包帯を巻いて痛そうにしている。いい気味だ。
そして、今日、学院の応接室でブルースとハリソン様に会った。
上司になるからブルース様だ。練習しておかないと良くないよね。そのブルース様が家にわたしが王宮魔法士部隊に入ることで話に来るのだが、いろいろ条件を教えてもらった。
正確には、騎士団の魔法士部隊で王宮に配属される。戦える必要はないそうだ。転ばないし!なんというか、研究をする場所らしい、魔力を最大に使ったらどうなるかとか、使い方を教える方法とかの研究。てことはやりたいことをやっていいってことらしい。身分は王宮武官となるそうだ。研究と称して図書館に篭っていても武官とか、いいのでしょうか?
学院に指導に行ったりもあるとか・・・
これなら、場合によっては治療魔法のことを明かしてもいいかも・・・
お給料は・・・これって沢山なのかな? お金のことはよく知らないから、これから勉強する。
部屋は動物がいると言ったら、王宮の寮の端の裏庭つきがちょうど空いているからそこを割り当ててくれるそうだ。掃除をやってくれる人も派遣してくれるそうだし、食事は三食、食堂で食べられるということだ。
なんか楽しみ、それでお給料を貰えるって!
騙されていると大変だから、お父様にも話を聞いて貰って・・・いや、だめだ。お父様は頼りないからナタリーのお父様に相談しようかな。
よく話を聞いて、すぐに署名しない。この心構えで大丈夫。
今日は連絡通りお二人が自宅に来る日だ。
母は連絡が来た日、わたしの帰りを待っていた。初めてのことだ。
「リリー、王宮魔法士部隊からってどういうこと?」
「わたしの仕事についてです」
「仕事って?」
「それの説明じゃないですか?」
「だから、どういうこと?」
「着替えたいのであとで」と言うとわたしは自分の部屋に行った。
そして、着替えるとお茶を飲みながらゆっくりと本を読んだ。
しばらくすると、母がやって来た。
「いつまで、待たせるの?」
「わたし、ちゃんと後でって言いました」と答えて本に戻った。
後で。今度ね。は断り文句だと理解しておりますよ。
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