16 今年は魔法で出場

待ちに待った競技会が近づいてきた。ロバート様に仕返しするぞ!!


わたしは、今回は魔法で出場する。エリザ様は弓に出るようだ。今回も交代とか言いだしたら反撃するつもりだったけど、何事もなかった。


あの大きな杖はどうしたのかな?


わたしはペン軸がやはり使いやすい。ロバート様から貰ったものだけど。ここは貰ったもの、じゃなくて貰ったもの。大事なこと。


競技会の練習で放課後、訓練場にいたら、そこにアナベルとロバート様がやって来た。




「お姉さま。その杖はすごく性能がいいですね。ちょっと貸して下さい」とアナベルが言った。

「アナベル。これは杖として使ってるけど、ペン軸よ」と答えると


「もしかして、それは僕が上げたやつ?」とロバート様が言うので


「はい、誕生日に。婚約してた頃ですね」と答えると、周囲がちょっとざわっとした。


「なに言ってるんだい。誕生日なわけないだろ。街歩きでちょっと買ったのを上げただけだよ」


「いえ、誕生日ですわ。粗末ですが」と答えると


「どっちでもいいです。未練がましくみっともない。考えなしはこれだから・・・」とアナベルは言うとわたしの手からペン軸を取ると地面に落として踏んづけた。


ペン軸はいくつかの欠片に割れてしまった。怒りがこみ上げてきた。人のものを


「なんてことするの?人のものを壊すなんて」とアナベルに言うと


「いやーー怖い。だって・・・ロバート様のものを・・・しつこい」

とロバート様に抱きついて喚いた。わたしもちゃんとしてないから言えないけど、我がミシガン家って行儀悪いよね。


「誰に貰ったものでもわたしのものです。壊すなんて」

「ぼくが気まぐれに贈ったものでも、リリーが持っているのは不愉快だ」

「別に誰がくれたものなんか関係ないわ。今はわたしのものですし、杖として使いやすかったのに」


わたしがそう言うとロバート様はなにも言えなくなった。それで重ねて

「誕生日の贈り物だと思っていましたが、気まぐれに買っただけのものだと。おかしいと思ってました。こんな安物。婚約者としての贈り物にしては安いものばかり。わたしが贈るのは父の指示を受けた使用人と一緒に買いに行った。それなりのものでしたから・・・ブラックレイク侯爵家の方針ですね。要は、ケチ!!」


「やめろ」

「わたしはお姉さまとは違うものをいただいています」

「侯爵家ではなくロバート様の方針だと言うことですね」

そう言いながら、わたしは欠片を手で拾った。


「残しておくと怪我の原因になりますね」

そう言うと残っている細かい破片を水で包んで回収して、ハンカチで包んだ。


「それでは。これで。皆様、練習の手を止めさせて申し訳ございません。失礼します」

そう言ってわたしは訓練場を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る