15 婚約披露のお茶会

わたしの気持ちをどん底まで落としたいのか、ロバート様とアナベルの婚約を祝ってお茶会を開くことが決まった。会場はブラックレイク侯爵家だ。

母とアナベルはドレスを注文したが、わたしは学生だから、制服で充分と言うことになった。まぁ当然のことだろう。


当日はじつに素晴らしい天気だった。わたしたちは馬車二台で侯爵家へ向かった。

両親とアナベルで一台。わたしと兄と弟で一台。兄も弟も新調した礼服を着ている。

家族のなかでわたし一人が制服って言うことに、家族の誰も違和感がないって逆に素晴らしいような気がする。


わたしたちはかなり早めに到着した。というのもアナベルの支度の仕上げを侯爵家でやるためだった。


わたしたちは客間に通された。兄のパーシーと弟のカイルはライアン様となにやら話しながら出て行った。


わたしが一人になった時、ブラックレイク侯爵夫人が入って来た。

「こんにちは、リリー。よく来たわね。婚約の解消はすまなかったわ。あんたの気持ちはわかっていたけど。息子の幸せを考えるとアナベルとのほうがね・・・


あなたとは年に二・三回のお茶で会っていたわね。そのお茶会の時ロバートはちっとも嬉しそうじゃなかった。だってあなた暗いのよ。自信なく下を向いて。わたくしもあなたが・・・そうね。はっきり言うと嫁としては物足りなかった。爵位を貰うって聞いていたから婚約させたけど。それが伯爵はアナベルに爵位を譲るらしいって聞いてね。それを言うとロバートは喜んでね。よかったぁと思ったの。それで、聞いたわよ。あの剣術の試合。ロバートが言うにはアナベルの応援で力が湧いたって。


打たれても不思議と痛みも怪我もなく試合が出来たって。だから、恨まないでね。後ね、ロバートがアナベルになにかされるんじゃないかと心配してるのよ。もちろんそんなことないと信じてるわよ。だけど・・・だからね。憎まれてもいいからわたしが、はっきり言うことにしたの」


ブラックレイク侯爵夫人が長いセリフを言った。わたしは黙って聞いて涙も流した。水魔法は便利。


「承知しております。わたしがだめなのが原因です。恨んでないとは申しませんが、お二人の幸せは祈っております」と言った。


「そう、わかっていただいて良かったわ」と言うと夫人はお茶を飲み干して出て行った。


確かに学院に入る前のわたしは暗かったわ。自分をだめだと思っていたものね。だけど、あなたの息子を優勝させるくらいの力はあるんだけどね・・・



お茶会は盛況で、若い参加者が多かった。アナベルはクラスの全員を呼んだらしかった。

彼らはみな、おしゃれして集まって来ていた。そして第三王子殿下のハリソン様もいらした。


「いやぁクラスのみなが集まるならわたしも出席したいよ。絶対、楽しいでしょ」ってことらしい。アナベルが言うように気さくな人なのだろう。


わたしは頃合を見て

「ブラックレイク侯爵ご令息。可愛い妹のアナベルへのお祝いをします」と言うと水魔法でバラ園の上に雨を降らせた。渾身の調整をして霧雨だ。


すると空に虹が浮かんだ。


「幸せへの橋です」と言うとハリソン様が拍手をして下さった。それに釣られて周りも拍手をし始めた。

「素晴らしい。素晴らしい魔法操作だ」とハリソン様が言うと更に拍手が大きくなった。


わたしは、挨拶をして裏へ引っ込んだ。


偶然、虹を作れるようになったんだ。水魔法で雨を降らせてみたくて練習していたら、虹が出来てクーロとサンデーが大喜びで、クーロは虹の上を何度も渡りサンデーは下をくぐり抜け一羽と一匹は、虹のこちらとあちらで燥いだのだ。それが、可愛くて、また見たくて虹を作れるように練習したのだ。


わたしの最高の魔法だと思ってる。


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