古書と滅びのヒストリア~史徒エル、禁書『大罪の黙示録』と出会う~

刹那いと

~プロローグ~

~プロローグ~ 復活祭


 10年に1度のその日、『聖ヨハネウス十字教国』では、復活祭――第1史徒ヒストリアの冥福を祈り、第12史徒ヒストリアの生誕を祝う日として、中央大聖堂都市『イストランダ』の広場は多くの市民が集い、大いに賑わっていた。


 その最中、遥か遠く、教国の東に位置する草原で、羊飼いの遊牧民『オルミス族』の聖女に、1人の男児の赤ん坊が産まれた。

 天井窓から星空の臨める羊小屋で、白銀のひげを蓄えた老人が、赤ん坊に語り掛ける――


「エル――エルノア。そなたに、我――ガンダレフの力のすべてを授けよう。行く道は決して、安息を赦してはくれぬだろう。だがエルよ、そなたなら、きっと、この世界の真理を知ろうとも、迷える仔羊たちを救い、導くために、この力を使うことができるだろう。

 ――さあ、受け取るがよい。この世のすべての書物が、そなたに味方しようぞ」

 ガンダレフの人差し指がエルの頬に触れると、その頬に金色に輝く六角星ヘキサグラムが刻まれた。


 それから10年後――物語は、史徒ヒストリア・エルが、大いなる世界の真理を記した書物に出会ったときから始まる。

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