守りたい想い



ゼノンは、木の下での瞑想から意識を戻したとき、アレンとの日々が頭の中に浮かんだ。彼と過ごす時間は、彼にとっての新たな光となり、心の奥に秘めていた感情が揺れ動いていた。絶対的な正義などないと諦観していた彼だが、アレンの純粋な想いに触れることで、自分自身の心の中にあった守りたいという気持ちが再燃してきた。


 「アレンは本当に強くなりたいと願っている。彼のために、私は何ができるのだろう?」ゼノンはそう思い、彼の純粋な想いがどれほど大切なものであるかを理解した。誰かを守りたいという想いは、ただ単に己のために力を振りかざすのとは全く異なる。自分の欲望を満たすための力は、一時的な満足をもたらすだけだが、他者を守るための力には、真の目的と意味が宿るのだ。


 彼はただ力を与えるのではなく、アレンがその力をどう使い、どのように成長していくのかを見守りたいと思った。アレンが目指す強さは、彼自身だけでなく、周囲の人々を守るためのものであると気づいたからだ。この思いが、ゼノンにとって新たな生きる意味となっていた。


 さらに、ゼノンの心の中には、アレンの師匠にも会ってみたいという願望が芽生え始めていた。彼はアレンから師匠の話を聞き、彼がどれほどの偉大な存在であるかを知っていた。自らの力を使って、アレンに何かを教えられるかもしれない。そして、彼の師匠がどんな教えを持っているのか、自らの成長を促してくれる存在に触れたいと思った。


 「自分の力を持って、アレンを守りたい。彼の師匠と会うことで、何か新しい道が見えるかもしれない。」そう考えると、ゼノンの心は再び熱くなった。彼は過去の悲しみを背負いながらも、新たな未来を築くために動き出すことを決意した。アレンの側にいることで、彼は再び生きる意味を見出すことができると信じていた。


 ゼノンは立ち上がり、村へと向かうことにした。アレンの笑顔を思い浮かべながら、彼は新たな決意を胸に抱いていた。彼が守りたいと思う存在がいる限り、彼自身も成長し続けるのだと。

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